【文スト】太宰治の奮闘記録

提案下手 ページ23

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最寄りの駅迄でいいですと云うAを云いくるめて、一緒に電車に乗った


改札迄でいいですと云うAを又云いくるめて、二人で歩く夜道


嬉しい事に、彼女の最寄りの駅から自宅迄は少し距離があるらしい



神様は、何処迄私の味方をしてくれるのだろうか


日頃の行いが善いとは到底思えないのに



「――ねえA」

『なんですか太宰さん』


同じ歩幅で歩く愛しい彼女が、にこやかにこちらを見上げた



「抱きしめてもいい？」

『百歩譲って脈略を下さい』

「ごめんごめん、違くて、さっき、好きになる努力をするって云ったじゃない？」

『云いましたね』

「其れって、具体的に何をするの？」



口を開けた侭、「あー」と数秒考えたAは、無邪気に目を細めて



『考えてませんでした』


と、笑った


百点満点の可愛さ、国宝レベルに到達



じゃなくて


「なら、私から提案があるのだけど」

『………余り期待出来ませんけど、一応訊きます』



じとりと見上げてくる彼女に、今度は私がにこりと笑いかけた




「取り敢えず、抱きしめてもいい？」

『厭です』


即答である



「ほら、そういう所が使命感なんじゃない？」

『そ、そうなんですか…？』

「いや知らないけど、でも、少しも考えないで答える辺り、断り文句が定型化してるのだと思うけど」



腕を組んで、「うーん」と考えるA


まあ、流石に流されないか


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