影山が大好きな奥さんの話。【影山飛雄】【HQ】 (ページ32)

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飛雄くんと初めての。ページ32

Aside

A「おかえり！思ってたよりも早かったね

なんか食べる？」

ガチャりと扉が開いて、特に酔った様子も無い飛雄がリビングに入ってきた。
そりゃそうか。明日も練習だもんね。

けれど浮かべる表情はどこか暗くて、日はひっそりと影に隠れていた。

A「…どうかした？」

影山「…いや、なんでもねえ」

風呂入ってくる。と言って飛雄は脱衣場に向かった。

飛雄がこうやって静かになる時は今までなってあった。

でも、その真相を私に告げてくれないのは、今回が初めてだった。

A「どうしたの。なんか元気ないね

皆との飲み会楽しくなかった？」

影山「…いや」

お風呂上がりの飛雄に、冷えたお茶とちょっとしたつまみをテーブルに置いて、飛雄に椅子に座るように促した。

対面で座った飛雄の表情はまだ影を落としていて、私は机上に力無く横たわっていた飛雄の手をそっと握った。

A「最近調子悪い？

私も最近仕事大変でさ～！でも、やっと後輩が仕事慣れてきてくれてさ。安心してるんだ

今日なんかさ、私が頼もうとしてた仕事、私が頼む前にしてくれててさ！ホントすごいよね」

影山「……」

A「…私も沢山辛い事あるけど、言ったら意外とスッキリするんだよ？

もちろん時間が解決してくれる事だってあるけど、

私には話してみちゃってよ、

飛雄が悩んでる事ならなんでも、」

影山「いいからほっといてくれよ」

私が握った飛雄の手は、その静かな声が聞こえたと共にぎゅっと力が籠っていた。

絞り出したような声に、私の心は少しザワついた。

A「……しんどいなら、明日の練習休む？

1人が嫌だったら私もなんとかして仕事早めに終わらせ」

影山「だから！いいっていってんだろ！」

握った手は振りほどかれ、飛雄は勢いよく立ち上がった。

初めて明確な飛雄からの拒絶に、私は息をするのも忘れてしまった。

A「と、とびお…、」

影山「＿＿＿＿しばらく1人にさせてくれ」

バタリと閉じられた扉の音だけが聞こえて、あとはリビングにただひたすらに静寂が走った。