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27.【救助エンド】兄妹として ページ35

真っ暗な空に、星々が輝いていた。

月は蒼く光り、月下の街を照らしていた。

そんな夜、一つの命が消えようとしている。

****

数台の車がとある屋敷の近くに止まった。

1人の構成員が、慌てて中に居る幹部へ声をかけた。

「中原幹部!救護班が到着しました!」


―――救護班が到着し、Aには適切な処置が行われた。

何とか血は止めることができ、輸血をしている途中、1人の男が飛び込んで来た。

「中也!Aは!?」

ポートマフィア幹部、太宰治だ。

「何とか無事だ。意識こそは無いが、恐らく大丈夫だろうとの事だ」

「そう…か、善かった……本当に」

妹は無事だった。

その事に安堵し、膝に手をついた。

急いで来た為、息が切れて肩でしている状態だった。


Aは病院へ搬送された。

太宰と中原は黙って立っていた。

何も云わず、立っていた――。

「さて、帰ろう」

が、太宰が止めた。

車に乗り込むと、そのまま帰ってしまった。

「……は?何だ、彼奴」

中原は、あまりの呆気なさに目を丸くした。

****

翌日の昼、病院からAが目覚めたと報告を受けた太宰は迷うことなく向かった。

病室へ入ると、丁度Aが起き上がっていた。

「やァA。気分はどうだい?」

「良好です。心配をかけてしまい、申し訳御座いません」

以前のようなギスギスした雰囲気は無かった。

「それは良いのだけど、その…"幹部"という呼び方、止めにしないかい?」

太宰の兄としての素直な頼み事はこれが始めてかもしれない。

Aは驚きはしたものの、その理由までは聞かなかった。

「判りま…判った。止めるね、兄さん」

「うん…有難う」

2度も失いかけた妹に、後悔を残さない為に素直になると決めた太宰。

兄妹としての距離を大幅に縮めた2人。

まだ素直になりきれないが、それでも理解は出来る。

「嫌だった?幹部って呼ばれるの」

「別に。現に私は幹部で、君は使えない部下だからね。

でも、いつ消えるか判らない命だ。後悔はしたくない。

これからは幹部と呼んだ場合のみ撃つことにするよ」

「物騒な事云わないでよ…」

冗談だと笑い合い、照れくさくなり顔を下げる。

「そうだ。今度、私の友人を紹介するよ。行きつけの店があってね、一緒にどうだい?」

「是非行きたいな」

素直じゃない兄妹が隣り合わせに並ぶ日は、きっと2人の誕生日となる。

後書き→←26.【死亡エンド】また逢おう



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オタクなめんな - すっごく面白かったです。映画でも見ているよな感じでした。 (2018年8月15日 3時) (レス) id: edf769ece4 (このIDを非表示/違反報告)
入浴(プロフ) - ゆきみだいふくさん» 有難う御座います!喜んで貰えたようでこちらも嬉しいです! (2018年3月26日 19時) (レス) id: d6f7c6ac49 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきみだいふく(プロフ) - 完結ですね!おめでとうございます!!大好きな太宰さんの色々な面が見られて嬉しかったです! (2018年3月26日 18時) (レス) id: 5f17ef063a (このIDを非表示/違反報告)
入浴(プロフ) - きのさん» 良かったですw私的には成功です! (2018年3月26日 16時) (レス) id: d6f7c6ac49 (このIDを非表示/違反報告)
きの(プロフ) - 泣ける (2018年3月26日 12時) (レス) id: e253f59a3b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:入浴 | 作成日時:2018年2月26日 16時

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