【文スト】素直じゃない兄【太宰】 (ページ19)

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１７.とことん邪魔してくれるね… ページ19

私はAを見つめ、口を開いた。

「ご苦労様」

瞬間、中也の拳が私のこめかみに飛んでくる。

私はそれを後ろに体を反らせて避けた。

それを想定していたのか、私は足を掛けられて尻餅をつく。

「った～…何？違った？」

不満を垂れる私の襟首を掴み上げた中也は、囁き声で私に怒鳴ってきた。

「違うだろ！どんだけ天邪鬼なんだ、手前はよ！」

「仕方ないだろ？口が勝手に動くのだよ」

「んな訳あるか！自分の体くらい従わせろ！！」

コソコソと会話をする私達を困惑した様子で見ていたAが、何かに気付いたように勢いよく振り返った。

「…何？」

私が怪訝な顔で見たため、中也もAを見た。

「誰か来ます。早く此処を出ましょう」

どうやら気付かれたようだ。

「ちっ…おい、出口への最短平方根(ﾙｰﾄ)は確保してある。さっさと行くぞ」

「へぇ、仕事が早いね」

「云っとくがな、確保したのは此奴だぞ」

中也は親指でAを指した。

やれば出来るじゃないか。

その意味を込めて微笑すると、Aは照れたように俯いた。

中々可愛い反応をするね。流石は私の妹だ。

――――無事に脱出することは出来た。

車も手配してあり、後は帰るのみ…なのだが。

恨むよ？蛞蝓。

今私は後部座席に３人並んで座っている。

中也が真ん中に座っており、その両隣に私とAが座っている。

「何故そこに座ったのか云ってみ給え、中也」

笑みを浮かべているが、自然と声の音調(ﾄｰﾝ)が落ちる。

それについて、中也は悪戯めいた顔をする。

「嫌いなんだろ？だから俺が遮ってやってんだ」

「は？何それ。私の中也に対しての嫌悪感に勝る人は居ないのだけど？」

火花が散りそうなくらいに睨み合っている私達を他所に、
Aは首領と連絡を取っていた。

「はい。今、車で拠点に向かっています。もうすぐで着くかと…はい、判りました」

真剣な顔をして連絡するAを見ていると、何故任務が成功しないのか不思議になる。

「え…ちょっ！首領！止めて下さい！！」

急に叫んだAに驚き、中也と共に顔を向けた。

どうやら照れているようだけど、何を云われたのだろうか。

「う…も、もう止めて下さい…！」

真逆…口説かれてる？

有り得ない。あの首領が？

私の妹を口説いている？

衝動的にAの手から携帯を奪い取り、耳にあてる。

聞こえてきたのは……

《お疲れ様…お休み、A》

私の声だった。