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12.私は知りたい ページ14

その後、直ぐに救護班が回収にかかった。

ついでに、死なれては困るから、頭(カシラ)の止血もしてもらった。


見送ったあとに、月を見上げる。

綺麗な赤い月だ。

「太宰、何で助けたんだ」

背後から話しかけてきた中也を横目で見る。

此奴のことは本当に嫌いだ。

見透かしたような事を唐突に口にする。

あの時だって…そんな訳がないのに。

『太宰、本当はやりたくねぇんだろ?』

『だから手前が……』

五月蝿いな。

「何でって…今回の任務ではっきりしたからだよ。

未だ使えるってね」

「本当にそれだけか?」

嗚呼、五月蝿い。ムカつくな…。

「…他に何があると思ってるの?」

挑発するように問いかける。

云ってみろ、中也。外れたら笑ってやる。


「手前が自分の気持ちに気付いた」


時が止まった。

実際には、沈黙が私達の間に流れただけだったが、

時が止まったように感じた。

それほどに、衝撃的な言葉だった。

「と、思ったけど、その調子じゃもう一息って感じだな」

中也は私の気持ちに気付いているって云うのか?

有り得ない…私のことを理解する人がいるなんて…

有り得ないんだ…。

「仕様がねぇから教えてやる。

手前は未だ彼奴を妹として見てるはずだ」

大きな刃に貫かれたような気持ちだ。

それこそ、あの大鎌に…。


[私の妹なんだ。

役に立たない訳がない。

もっと本気を出し給え]


そうだ、これだ。

これを云いたいのだ。

「彼女は私の妹だ。

必ず役に立つ。使えない筈はない」

「手前の妹じゃなきゃ、使えないもんなァ?」

「違う。あの子は強いよ。訓練すればね…」

中也を睨みつける。

私から本音という本音を引き出すつもりだ。

「訓練させなかったのは何でだよ」

「判らないのかい?これの為だよ。

今回の作戦の為には訓練など要らないからね」

再び月に視線を移す。

綺麗だ。

「手前ら兄妹揃って月が好きだよな」

「兄妹揃って…?あの子もよく月を見上げるのかい?」

月からは視線を外し、虚空を眺めた。

もう1度中也を見る気はない。

「あァ、入っていった時は未だ月を見上げてたな」

そうか、あの子も月を見ていた。

なら、同じように綺麗だと賞賛していただろうか。

「…戻ろう、中也。

そろそろ次の任務が言い渡される筈だ」

踵を返し、夜の道を歩く。

何故か、いつもより心地が善かった。

13.此処は何処?→←11.未だ君を知らない



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オタクなめんな - すっごく面白かったです。映画でも見ているよな感じでした。 (2018年8月15日 3時) (レス) id: edf769ece4 (このIDを非表示/違反報告)
入浴(プロフ) - ゆきみだいふくさん» 有難う御座います!喜んで貰えたようでこちらも嬉しいです! (2018年3月26日 19時) (レス) id: d6f7c6ac49 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきみだいふく(プロフ) - 完結ですね!おめでとうございます!!大好きな太宰さんの色々な面が見られて嬉しかったです! (2018年3月26日 18時) (レス) id: 5f17ef063a (このIDを非表示/違反報告)
入浴(プロフ) - きのさん» 良かったですw私的には成功です! (2018年3月26日 16時) (レス) id: d6f7c6ac49 (このIDを非表示/違反報告)
きの(プロフ) - 泣ける (2018年3月26日 12時) (レス) id: e253f59a3b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:入浴 | 作成日時:2018年2月26日 16時

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