陸拾陸：覚醒の兆し ページ20
実side
ピチャリと水が滴る音がする。冷たくて暗い空間の中、俺はゆっくりと目を開いた。
「漸く起きたか、榎森実」
低い声が上から降り注いだ。真っ赤な水の床と、辺りに散らばる無数の牛骨。そしてその骨の山の頂点には、さっき相対した宿儺が偉そうに座っていた。
見た目は虎杖と同じだが、先程とは違って着物姿になっている。宿儺は「小僧の見た目と言うのは実に気に食わんな」と顔を顰めていた。
『此処はお前の生得領域か？』
「そうだ。と言っても、この場に居る俺は貴様の内にある指一本分の呪力しか持ち合わせぬ分体だがな」
…そうだ。さっき指入れられたな、俺。
『俺はお前の器にはなれないぞ。無駄なことをしたな、呪いの王』
ハッと鼻で笑ってやると、宿儺は骨の山からふわりと飛び降り、俺の方へ歩いてきた。
戦闘姿勢をとる。生得領域内とは言え、好き勝手されるつもりはない。意地でも抵抗してやる…っ
「そう怯えるな。取って喰う心算は無い」
静かに笑うその顔が少し不気味だ。調子が狂う…っ
宿儺がゆっくりと俺に近づいてくる。一歩、また一歩と歩みを進めたその時、
キンッと音が鳴った。
『…は？』
ボトリと何かが落ちる音と同時に、両手の感覚が失せる。また一歩踏み出した瞬間、キンッという音と共にぐらりと体が傾いて水の床に倒れこんだ。
『っ…！？』
「っはは、愛い姿になったなぁ？榎森実」
両手足の感覚が無い…っ、肢体切り落とされたか…！
達磨状態にされた俺は、水の上を這うしか出来ない。コトリバコの術式を使おうとしたが、何故かコトリバコの術式は反応しなかった。
「分身とはいえ此処は俺の領域だ。箱は使えんぞ？」
上から声が降る。俺は乱雑に蹴り上げられ、仰向けに倒された。真っ赤な瞳が俺を見下ろしている。
「確かに貴様は器には出来ぬだろう。…が、仮宿には出来る」
虎杖と同じ顔が、嫌な笑顔を浮かべた。
「貴様に他の呪力が纏わりついているのは好かぬ。故に貴様を仮宿にして俺の物にしてやろう。泣いて喜べ」
『っ、ふざけるな…っ、誰がお前のような呪いなんかに…っ』
声は途中で途切れる。胸元に勢い良く突き入れられた手が内臓を弄繰り回す様に動かされ、激痛に喉が潰れたからだ。
「急がずとも貴様は呪いになるのだ。そう怯えることはない」
ズブズブと嫌な音がして、宿儺の呪力が俺に入っていく。まずい、意識が…っ
ブチリと、封が破れる音がした。
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九龍-くーろん-(プロフ) - 日向さん» ありがとうございます！一気に読んで頂けるとは…！とても嬉しいです！更新頑張ります！ (2021年1月24日 21時) (
レス) id: 50fae09df6 (このIDを非表示/違反報告)
日向(プロフ) - 初めまして！主人公の設定や周囲との関係、ストーリーなどがとても面白くて1作目から一気に読んでしまいました！応援してます、更新頑張ってください！ (2021年1月24日 20時) (レス) id: 0ceab624dc (このIDを非表示/違反報告)
九龍-くーろん-(プロフ) - 南蛮モナカさん» ありがとうございます！とても嬉しいです…！今後とも主人公達の道を見守って頂けると嬉しいです！更新頑張ります！ (2021年1月23日 0時) (レス) id: 50fae09df6 (このIDを非表示/違反報告)
南蛮モナカ - 設定とかキャラ達の関係性？とか話の進み方とかすっごく好みです！更新がんばってください！ (2021年1月22日 23時) (レス) id: 4ea39a9195 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：九龍 -くーろん- | 作成日時：2021年1月21日 17時
