陸拾：悪夢だ ページ14
伏黒side
生暖かい血液が、顔を濡らしていた。
呆然とする俺の前に、白くなっていく手が見えた。おかしいほど震える手で握ると、既にその手は人の温もりの大半を失っていた。
「………榎森？」
動かない。
「なぁ、榎森」
返事が無い。
「なぁ」
息をしていない。
「榎森っ！！」
感情のままに言葉を吐き出すと、それは怒声に変わっていた。
熱い、身体が熱い。感情が渦を巻いて頭の中を駆け回る。じわりと、目から涙が溢れた。
「う゛あぁああ゛ぁああああ゛ぁ゛あああ゛ぁっ！！！！！！！」
虎杖の咆哮が空気を裂く。顔を上げると、虎杖が邪視に向かって拳を振り下ろしていた。
無理だ。呪力の無い打撃で呪霊が倒せる筈が無い…！！
虎杖の拳はあっさりと止められ、蚊でも払うかのような雑さで振り払われた。やり返しとばかりに数本の木をなぎ倒しながら、虎杖はぐったりと動かなくなる。
「っこの…！」
「釘崎よせっ！！」
激昂した釘崎が釘を構えるが、それも邪視の赤い瞳で止められてしまう。ただの釘と化したそれは地面に落ち、カランと音を奏でた瞬間、邪視は釘崎目掛けて一気に距離を詰め、腕を横に振り払った。
ゴッと鈍い音を立てて釘崎が横に吹き飛ぶ。顔を捉えた一撃は簡単に釘崎を黙らせた。
「……」
俺だけだ。俺しかもうこの場には残ってない。呪力は戻りつつある。でも、あの赤い瞳の前じゃ…っ
違うだろっ！！
「……よくも…」
榎森を寝かせ、ふらりと立ち上がる。怒りによって湧き上がった呪力が、身体から溢れるのを感じた。
「よくも、俺の仲間を…っ」
手を握り締める。縦に揃えるようにして構えを取り、目の前で機嫌良さそうに揺れるその姿を、殺す勢いで睨みつけた。
「布瑠部、由良由良…！」
お前は、この場で
「…伏黒…っ」
耳朶に飛び込んできた声に、フッと頭が冷える。声の方を見れば、虎杖がふらつきながら立ち上がっていた。頭から血を流しながら、それでも真っ直ぐ邪視を睨みつけている。
「榎森は俺が連れ帰る。釘崎と一緒に帳の外に出てくれ…」
「お前だってボロボロだ「大丈夫っ！！！……大丈夫だって」
…嗚呼、そうか。そういうことか、虎杖。
「……分かった」
構えを解き、釘崎を背負ってその場から走り去る。最後に見た光景は血の池に沈む榎森の姿と、
「…あんがとな、伏黒」
小さく笑う、虎杖の顔だった。
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九龍-くーろん-(プロフ) - 日向さん» ありがとうございます！一気に読んで頂けるとは…！とても嬉しいです！更新頑張ります！ (2021年1月24日 21時) (
レス) id: 50fae09df6 (このIDを非表示/違反報告)
日向(プロフ) - 初めまして！主人公の設定や周囲との関係、ストーリーなどがとても面白くて1作目から一気に読んでしまいました！応援してます、更新頑張ってください！ (2021年1月24日 20時) (レス) id: 0ceab624dc (このIDを非表示/違反報告)
九龍-くーろん-(プロフ) - 南蛮モナカさん» ありがとうございます！とても嬉しいです…！今後とも主人公達の道を見守って頂けると嬉しいです！更新頑張ります！ (2021年1月23日 0時) (レス) id: 50fae09df6 (このIDを非表示/違反報告)
南蛮モナカ - 設定とかキャラ達の関係性？とか話の進み方とかすっごく好みです！更新がんばってください！ (2021年1月22日 23時) (レス) id: 4ea39a9195 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：九龍 -くーろん- | 作成日時：2021年1月21日 17時
