序 ページ1
no side
「この辺りなんだよなぁ〜よく兎が跳ね回って、絶好の狩場なんだよ」
「本当かぁ?さっきから動物一匹出てこねぇじゃん」
「うるせぇやい!」
猟銃を構えた男達が、楽しげに森の中を歩く。
そこは人の死が絶えないと噂の樹海だった。薄暗い木々が鬱蒼と茂り、太陽の光を点々と差し込ませる。落ちた細い枝を踏み締めれば、パキッと軽快な音が鳴った。
男達は三人。どれも銃を背中に背負い、筋肉質な体躯を持つ屈強な者達だ。その中の一人である顔に傷跡がある男が、楽しそうに他の仲間達に獲物の自慢をしていた。
「んでよぉ、こんぐらいの猪が捕れた時なんか、そりゃあもう飛び上がって喜んだね」
「お前それ本当かよ〜?」
「ははっ!…お?」
「どうした?」
「いや、何だありゃ」
「あ?」
一人が何かを見つけ、右側を指差す。残りの二人も釣られるようにして、右へと顔を向けた。
遠くの方に白い物体が立っていた。ゆらゆらと揺れるそれは、ぼんやりとだが人の形をしているように見える。
「何だありゃあ、人形か?」
「こんな森の奥でンなモン置いてるわけねぇだろう」
「じゃあ何だ?今から死ぬっていう…」
「おいおい、マジかよ…!」
三人の間に不穏な空気が漂う。もしかしたら、あの人は今から木にロープをかけて…なんて考えが脳裏に過ぎると、一人が慌てて白い人の方へと走って行った。
「ちょ、おい!」
「本当にそうだったら止めねぇとだろ!おーいっ、早まるなよー!!」
声をかけながら走って行ってしまう仲間の背中に、残された二人は仕方ないなとばかりに追いかけていく。
が、その足は途中で止まることとなった。
「うあぁあ゛あぁぁぁあ゛ぁぁあぁっ!?!?」
突然、前を走っていた男が絶叫したのだ。二人はその断末魔とも取れるような恐ろしい叫び声に、足が竦んで立ち止まってしまう。
「お、おい、どうしたんだ…!?」
白い人が動いた様子は無い。前の男は顔を手で覆いながら、ふらりと二人の方に振り向いた。
「目、目がぁ…!」
手が下ろされる。途端にボタタッと赤い液体が大量に零れ落ちた。
「ヒッ…!?」
「あ、ぁ…っ」
声にならない声が漏れる。前の男がよろめいて地面に倒れる。その瞬間、白いそれと"目が合った"。
男達の悲鳴と共に、烏が数羽空に羽ばたいた。
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九龍-くーろん-(プロフ) - 日向さん» ありがとうございます!一気に読んで頂けるとは…!とても嬉しいです!更新頑張ります! (2021年1月24日 21時) (レス) id: 50fae09df6 (このIDを非表示/違反報告)
日向(プロフ) - 初めまして!主人公の設定や周囲との関係、ストーリーなどがとても面白くて1作目から一気に読んでしまいました!応援してます、更新頑張ってください! (2021年1月24日 20時) (レス) id: 0ceab624dc (このIDを非表示/違反報告)
九龍-くーろん-(プロフ) - 南蛮モナカさん» ありがとうございます!とても嬉しいです…!今後とも主人公達の道を見守って頂けると嬉しいです!更新頑張ります! (2021年1月23日 0時) (レス) id: 50fae09df6 (このIDを非表示/違反報告)
南蛮モナカ - 設定とかキャラ達の関係性?とか話の進み方とかすっごく好みです!更新がんばってください! (2021年1月22日 23時) (レス) id: 4ea39a9195 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2021年1月21日 17時