❤鼻が利くってのは意外と便利だね ページ47
ジャックside
……独特なお茶の香りがする。うっすらと目を開けると、泣き腫らした目で僕を見て「ジャック!」って無邪気に笑う毒林檎の顔が見えた。
「……ダル…」
「良かった!ごめんな親友〜!僕が毒吐いちゃったから…」
「いや、大丈夫さ。…この匂いってどくだみ茶?」
「!そうだぞ!アップルが持ってきてくれたんだ!」
あー、僕達の世界にある茶葉だなこれ。嗅いだことのある匂いに鼻をひくつかせながら周囲を見ると、僕と同じように倒れてたのかエースとマルフィもお茶を飲んでアップルやエイトフットと談笑してた。
というかアイツの毒ってちょっと吸っただけでも意識失うレベルでやばいんだな。良かったトランプ兵で!
「具合悪いところとか無いか?」
「無いよ、ばっちりさ!流石親友の体だね!」
ぐるぐる腕を回して元気なことをアピールすると、親友はぱぁっと笑顔になって僕に抱きついてきた。うわっ、すっごく甘い林檎の匂いがする!
「あ!毛皮の匂いがするぞ!へへ、落ち着く〜♪」
「ちょ、ちょっとダル!?あまり林檎の顔で近づかないで!」
「え〜!?何でだ!?僕は林檎だけど林檎じゃないぞ!」
そうなんだけどやっぱり嫌いなやつの顔が近いのはなんか嫌なんだ!ごめんね親友!
……というか…色んな匂いがして落ち着かないんだけど。
「(これが親友の世界か……)」
色んな匂いがする。林檎の甘い香り、蛸の水っぽくてしょっぱい海の香り、風と植物が混じったような鳥の香り、薔薇と乾いたインクの香り、僕の体からも毛皮と日向ぼっこした親友からたまに香るお日様の香りがする。ダルってこんな多い匂いの中を嗅ぎ分けてたのか…
「ダルって凄いね。色んな匂いの中から僕達のこと探し当ててたんだ」
「…!そうだぞ!僕はクルエラ様のお気に入りでグッドボーイな犬だからな!ご主人の香りも、友達の香りも全部覚えてるんだ!」
えっへん!と胸を張る親友を「凄いな〜!」って撫でてやると、親友はまた笑顔になる。犬っぽい所が抜けないのが親友らしい。
「(……あれがエースの匂いなんだ)」
ソファで足を組んでお茶を飲むアップルから香るのは、薔薇と紅茶、強いインクの匂いに、アップルパイみたいな甘い匂い。色んな匂いが混じってまるでお茶会みたいな香りがした。
「(…ちょっと得した気分だ)」
嗚呼、親友の体で良かった!知らなかった恋人の香りを知れて、僕は少しだけアップルに羨ましいだろと心の中で笑った。
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2022年10月20日 0時