❤君の中に刻むように ページ37
ジャックside
ティーカップに乗って楽しそうにしているエースを見るだけで幸せになる。クルクルと回るカップの中、さっき見えた光景を少しだけ思い出した。
さっき、一瞬だけどエースの目が青くなった。すぐに暗示をかけて戻したけど、やっぱり人の中に紛れるのは早かったかな…?
「(でも、こんなに楽しそうなんだ)」
キラキラ目を輝かせて楽しむその笑顔に胸が温かくなる。エンターテイナーが望む最高の笑顔を、彼はいつも見せてくれる。そんな彼がこんなに楽しんでいる世界を、僕は彼から奪うことは出来ない。
『楽しかった〜!』
ティーカップを乗り終わってうんと伸びをするエースに、僕は「そろそろご飯食べに行こっか」って声をかけた。
「夕暮れも近いし、結構お腹減ってきたでしょ?」
「言われれば確かに………」
『ぺっこぺこだよ!あれだけお昼に食べてたのにね!』
不思議だよねぇ人間の体って。ケラケラ笑ってから、僕はアップルに目配せした。アップルが頷くのを見て、僕はエースの手を取る。
「じゃ、女王様の食卓にお邪魔しようか!」
『え!?い、いいのそんな事して!?首刎ねられちゃうよ!?』
「大丈夫大丈夫!本物の女王様じゃないから!」
手を引いて歩いて行く。着いたのは僕たちのお城を模したレストランだ。
「凄いな………そのまま夢の世界から持ってきたのか?」
「アップルも何言ってんのさ!レプリカみたいなものだよ全部ね。ほら、トランプ兵も動かないし」
隣に立って「やってるー?」って肩に手をかけると、エースは『スペードはそんな軽口乗らないじゃんっ』って爆笑してた。知ってるよ〜!スペードってみんなお固くて嫌になっちゃうよね!
「さ、中に入ろう。席取らないとどんどんご飯の時間が少なくなるからね!」
手をしっかりと握って。君が離れないように、迷わないように。赤と黒と白の3色に彩られた中に咲き誇る薔薇のアーチを抜けて、僕達はお店の中に入る。
もし思い出したとしても、今日みたいな楽しい日を少しでも覚えてくれればいい。
僕は覚えている人が居る限り、君を強く縛る鎖になれるのだから。
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2022年10月20日 0時