♡意地悪なのはお互い様だ ページ19
エースside
被っていた帽子が床に落ちる。腕を掴まれたまま床に押し倒されて、視界いっぱいにアップルの怖い顔が映った。
『アハ、キレた?』
「…人をあまりからかうなよ」
『人ぉ?僕達トランプと毒林檎だろ?』
嗚呼、綺麗だ。黒みの増した綺麗な赤。女王様の赤やジャックの赤とは違う、毒のような赤色。その赤色の瞳が今、僕だけを見ている。
『でも、今の毒林檎ならワンバイトしてみたいかも』
そう言って手を伸ばして頬を撫でると、アップルはぐっと唇を結んで顔を赤くしちゃった。
「…お前は、ジャックより真面目だと思っていたんだがな」
『ほんと?そりゃ嬉しいなぁ。…でも僕もヴィランだ』
頬を撫でる手を胸に移し、胸倉を掴んで引き寄せる。ぐっと近づいた唇にキスをすると、アップルは真っ赤な目を見開いた。
『アップルの初めて取っちゃった』
ぺろりと舌なめずりしてやると、突然片手で頬を掴まれてそのままキスされた。
愛でるなんて生温いもんじゃない。無遠慮に舌が入ってきて、口の中を荒らすように暴れ回る。あの時のねちっこいキスじゃなくて、もっと乱暴で、激しくて、夢中になるようなキス。
『ん、ぅ……っ』
「…っ、ん゛…っ」
唸り声を上げて角度を変えて、ジュルリと音を立てて舌を吸われて、甘くて熱いキスに背が震える。あ、林檎の味がする。やっぱり林檎なんだなぁ…なんて考えてたら、トロォ…と舌先から溢れる唾液が見えて、アップルが息を荒くしながら目だけギラギラさせて僕を見下ろすのが見えた。
「煽るな…エースハート…っ!」
『っはは!アップルのえっち…♪』
こんなに果汁だらけじゃ僕ふやけちゃうよ。口の中に残る甘い唾液を見せつけるように喉を動かして飲んでやったら、またぎゅって唇を噛むのが見えた。
『自分をワンバイトしちゃってるよアップル』
「っ、お前が悪い!」
『ふふ、でも今はここまでね』
体をトランプにしてアップルの下から退散する。人の姿に戻って部屋の電気を付けてあげてから、僕はアップルの方を振り返って口元に人差し指を添えて笑った。
『続きをしちゃったらジャックに怒られるからね。でも元気出たようで良かったよ』
「誰かさんが散々煽るおかげでな…っ」
『ははっ、それはごめんよ!…好きだよアップル、僕も君に応えられるよう頑張るね』
ドアを開けて手を振って部屋を出る。これで少しは元気出たら良いなぁ。
『(…癖になりそうだ)』
唇を舐めて、僕は自分の部屋に戻った。
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2022年10月20日 0時