赤色に染まる白の君 (ページ8)

今日:2 hit、昨日:34 hit、合計:13,869 hit

❤ちょっとした昔話さページ8

ジャックside

彼は自分がタルトを食べたと告げた。彼はまだ幼いこともあり、僕が斬首刑の代わりにこの世界から追放することを条件に出した。
アリスは自力で抜け出せるほどの歳だった。でもこの子はアリスより幼い。女王は首を刎ねろと意気込んでいたが、僕が責任を持って帰すと説得して彼を返した。

"全部夢。夢の中での出来事だ"

そう吹き込んで帰した。でも帰る直前、彼は別れ際に僕にプレゼントをくれた。
一枚の画用紙だ。クレヨンで描かれた歪なその絵には、彼と人の姿で描かれた僕が居た。
彼はこう言った。

『"また会えるように僕のお顔を貸してあげる！そうしたらジャックだって分かるでしょ？"』

『特別だよ？』と付け足された言葉。特別、僕だけの姿。彼がくれた僕だけの、大切な宝物。

「とても帰すのが惜しかった。でも女王との約束は絶対だ。僕は泣く泣く君を元の世界に帰して、その後かるーく見せしめとして首を刎ねられかけた。痕が残らなくて良かったよほんと…」

首元に触れれば大きい彼は少しだけ辛そうに目を伏せた。恐らくそこまで一生懸命帰してくれたにも関わらず、自分が覚えていないことを気まずく思ってるんだろう。でもそんなことは関係無いさ！

「でもこの通りピンピンしてる！それにまた君に会いたくて手紙まで送ったんだ！女王も幼い頃の罪だからと許してくれたよ！君はまた此処に居て良いんだ、またこの世界でたくさんたくさん遊んで良い！僕とまた遊ぼう、アリス。君が居ればワンダーランドはまた素晴らしい世界になる！」

君が与えてくれた姿で踊り、歌い、騒いで、夜が明けるまで遊び倒そう。たとえ幼くなくても、君は僕の"特別"なんだ。きっと世界も許してくれる！

『……お前が小さい頃俺に会っていて、俺が体験した不思議なことにずっと付き合ってくれたのは分かった。それに何で俺に執着してるのかも分かった。…でも、俺はお前とまだ楽しく遊べない』

その一言は静かで、申し訳無さそうだった。
椅子から立ち上がる彼は『ごめん』と謝って何処かへ行こうとする。僕は「待って！」って声をかけて追いかけた。

「何も今日からなんて言わないさ！君には君の世界がある、だから夜の間だけ会わないかい？」
『…！……まぁ、夜なら…』
「ほんと！？いいの！？やった！じゃあ今日は歓迎会だ！さぁ席について、新しいティーカップを用意しないと！」

彼の手を引いてお茶会に戻る。さぁ、ここからがショータイムだ。