👿難儀なものに好かれたなぁ ページ48
マルフィside
「…で、リクルート中に派手にやらかして、黄色い悲鳴をあげさせてしまったと…」
大体の事情を聞いてから、私はソファに座って落ち込むアップルに「まぁそう気を落とさないで」と声をかけた。
リクルーティングが終わる時間に突然ノックをされたから驚いたよ。しかも相手はあのアップルだ。
「ファージャからも"アンタはエース好きなんやなぁ"などと言われてしまった…違う…私はハートを壊すつもりで…」
「でもそんな会話の後に笑顔でハートを撃ったら誰でもそう思うさ「私は！断じて！！笑顔など浮かべていない！！」まぁまぁ落ち着いて」
きっと無自覚で出てしまったんだろうなぁ。現に子供になっていた時もふにゃっふにゃな笑顔を浮かべていたし…
「でももう分かってしまっただろう？ちょっかいをかけていた相手に絆されるどころか、恋愛感情を抱いてしまったことに」
「っ……」
…認めたくはないけどそう思わざるおえない、という顔だな。
「君ほどの紳士が惚れ込むなんて、彼は相当魅力的なんだねぇ」
「ち、違っ！」
「まぁ私も彼のことは好きだよ。ああ、止まり木を愛でる程度の好きであって君のように恋愛的なものではないさ、未だに彼のインク臭さにも慣れないしね」
身嗜みを気にしない所が直らない以上、気に入りはするが深入りはしないなぁ。まぁ顔も良し性格も良し、元人間という癖はあれど立派なヴィランだ。相手としては申し分ないと思うが…
「(よりにもよってジャックと同じ子を好きになるとは…)」
きっとそこが彼の悩みなのだろう。相手はあのハートのジャックのお気に入り。しかも恐らく彼も恋愛的な感情を彼に向けている。しかも無意識だ。そんな相手の手中にあると言ってもいいエースを好きになった、アップルにとっては非常に不利だろう。
「で、自覚してしまった以上以前のようには振る舞えないだろう。どうするつもりだい？告白でもするのか？」
私が問うと、アップルは顔を上げてこう言った。
「…こうなったらヤケだ。毒漬けにして私のものにする」
…おぉっと…本気だな…
初めて会った日のようなスッとした黒にも見える据わった赤黒い瞳が爛々と輝いている。そこにあるのは恋愛というより、狂気にも近い愛情と嫉妬だ。
「…ジャックとの喧嘩も程々にね」
「分かっている、迷惑はかけないさ。…突然済まなかったなマルフィ」
「気にしないでくれ。何かあったら相談に乗るよ」
大変な二人に好かれたものだね、彼も…
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作者名：九龍 -くーろん- | 作成日時：2022年10月11日 21時
