赤色に染まる白の君 (ページ37)

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👿君は本当に面白いねページ37

マルフィside

「well,well……二人共撃沈だねこれは」

夕飯の時間になっても来ないから呼びに来てみれば…まぁなんとも美しくない部屋だ。
書類が山のように積み重なったエイトフットの部屋には、彼の契約書とはまた別の薔薇印の書類が散乱していた。そして机の上には山の中で倒れるように突っ伏しているエイトフットとエースの姿が見える。私は書類を踏まないように歩きながら、エースの元へと歩み寄った。

「凄い隈だな」

昨晩帰ってきてずっと書いてたのだろうか？彼の目元には珍しい濃い隈が出来ていて、スースーと寝息を立てるその口元には海老の切り身の欠片が付いていた。
ふむ……二人で仕事をして、夕飯代わりに魚介のパスタを食べつつまた仕事…そしてエネルギー切れで撃沈、の流れだな。全く、どうして仕事に追われる者はいつもこう自分の身を顧みないのだろう。
口元の切り身を指で取って食べてから、私は彼をそっと抱き上げた。力のない体は重いものなのだが、彼は意外にも鞄を持ち上げるよりも軽々と抱き上げることが出来た。

「エイトフットもベッドに寝かせないといけないな…」

その前にまずはエースを自室に移してあげようじゃないか。
書類の合間を縫って部屋を出る。そのままプリンセスを腕の中に抱くように彼を抱いたまま廊下を歩いていると、不意にエースが私の袖を指でつまんだ。

「おや？」

起きてしまったかな？いや、違った。

『……♪』

彼はとても安心したように眠っている。まるで子供のようなその寝顔は、ジャックと同じであるにも関わらず少しだけ可愛らしく思った。

「きっと人間だった時の癖なんだね」

何かを掴んでいないと寝られないのだろう。彼の部屋のドアを開けてベッドに寝かせると、私はそっと上着を脱いで隣に置いた。ずっと握って離さないんだ、貸してあげるしかないだろう？

「さてと」

睡眠に関して私は妥協しない。美しい毛布、美しい音楽、美しい香り…魔法で全てを揃えて毛布を彼にかけると、彼はモゾリと動いて毛布の中で丸まって寝始めた。
ふふ…可愛らしいじゃないか。

「ジャックも悪いやつだな」

こんな可愛らしい子をワンダーランドに繋いでしまうなんて。もう少し早く会っていれば、私が攫ってしまったかもしれない。
ああ、成程。これがジャックの気持ちか。逃がすなと言ったVの言葉に少しだけ口角を上げて、私は部屋を後にした。

良い夢を、愛らしいトランプ兵。