参拾陸：気になること ページ37
釘崎side
「"簪"！」
『っ…！』
釘を打ち込んで天井を崩落させ、逃げ場を奪っていく。
私の釘はアイツにはあまり効かない。理由は分からないけど、多分アイツの術式の力なんだろう。伏黒の式神の攻撃すら通さないあの守りがある以上、簡単には刺さらないと思う。
でもちょ〜っと気になることがあるのよねぇ…？
「(アイツ、何で必死に逃げ回るのかしら)」
私が天井を崩しても、あの守りで防げばいい話でしょ？なのに必死で逃げ回ってる。伏黒が操る玉犬からの攻撃も、虎杖からの攻撃も、受ける時もあれば避ける時がある。
「…もしかしてアイツ…」
私は一つの可能性を感じ取っていた。
「伏黒！」
「"鵺"！」
虎杖が駆け出し、伏黒が鵺で攻撃を仕掛ける。雷撃を纏った翼が羽ばたいて雷を散らして走る中、虎杖は跳躍して真上から拳を叩き込んだ。
『"生力創術"…！』
雷撃を纏って突進した鵺を身体で受け、上から降ってきた虎杖の拳を両手で受け止める。バチンッと大きな音が鳴るとまるで発光したように雷が弾けた。
「っ…！」
虎杖の悔しげな顔を見る限り、やっぱり効いてないみたいね。手に持った釘を宙に投げて、静かに息を吐く。小さく、小さく呪力を流して…
「"芻霊呪法"…」
がら空きの背中が丸見えなんだよ…！
ガツンッと釘を撃ち出す。虎杖を放り投げ、鵺を蹴り飛ばしたその背中に釘が飛来すると、二本の釘は弾かれることなく深々と榎森の背中に突き刺さった。
『い゛っ…！？』
「っ！？当たった！？」
やっぱりね。榎森の守りの術式は自動発動じゃない、自分の意思で発動してるんだ！
アイツが攻撃が来たと認識すれば守りが発動する。それに攻撃されてても逃げるあたり、呪力消費半端無いんじゃないかしら？乱用できないからこそ、攻撃を認識しないと発動できない術式ってことでしょ！
「恨みはないけど、ちょっと痛い目遭ってもらうわよ」
『っ…』
いい顔するじゃない、アンタ。釘を抜いてこっちを睨みつける紫の瞳に、微かに殺気が宿るのが見えた。
「呪い合いましょ？呪術師らしく、ね」
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作者名：九龍 -くーろん- | 作成日時：2021年1月12日 16時
