呪箱異譚 (ページ34)

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参拾参：特別授業ページ34

五条side

さ、やって参りました授業の時間で～す！とまぁふざけるのは程々にして…

昼の1時近く。一年生全員を集めた僕は、とある廃墟に来ていまーす！だって此処の方が戦いやすいでしょ？

「さ、覚悟は良いかい？皆」
「覚悟も何も、やれるだけの事をするだけです」
「だよな！」
「ま、そうね」
『右に同じく』

皆やる気満々だね。じゃ、早速やっていこうか。
此処は廃墟と化した工場。機材が無い分ガランとした広い空間だけで、遮蔽物なんか全く無い。
こういう場所ほど、戦う時は結構きついんだよね。

「じゃあ実VS一年三人！手加減無しの術式勝負といこうじゃないか。あ、勝った方にはご褒美としてダッツあげるよ」
「「ダッツ！？」」
『それでいいのかお前ら』
「ほっとけ、いつもの事だ」

いやぁ、相変わらず野薔薇と悠仁はノリがいいね！恵と実ももうちょっとノッてくれていいんだよ？

「じゃあ皆、位置について～？」

近くにある廃材に腰掛けて手を叩く。
恵、悠仁、野薔薇の三人は実を取り囲むように立ち、各々戦闘態勢を取った。

「よーい…」

緊張を纏った空気が場を支配する。その中で、実はリラックスしたような力の入っていない姿勢のままだ。

「どん！」

僕の声と共に、三人が一斉に攻撃を仕掛けた。

恵の玉犬が牙を剥いて襲い掛かり、野薔薇の呪力を纏った釘が高速で飛んでいく。
その中を潜り抜けながら、悠仁が呪力を込めた拳…僕が教えた逕庭拳を実目掛けて叩き込んだ。

全て一瞬。3つの呪力が一つの獲物に向かって飛んでいく。
一点に集中した力が巻き起こす衝撃は凄まじく、突風と共に砂埃が巻き上げられて視界が煙で曇るほどだ。

「(出は上々かな)」

まぁでも、この程度じゃねぇ？

「…嘘だろ」

悠仁の小さく漏れた呟きが耳に届く。煙が晴れた先には、予想通りの光景が広がっていた。

玉犬の牙を右腕で防ぎ、釘を左手で掴み止め、腹に悠仁の拳を受けても立っている実の姿。
釘も玉犬の牙も、しっかりと実の体に触れているが貫通するまでには至っていない。血の一つすら落ちはしない。

『甘い』

涼しげな声と共に、驚きで怯んだ悠仁の腹に実の蹴りがめり込んだ。