弐拾玖:確認すること ページ30
五条side
「で、コトリバコの術式は使えるの?」
一番聞きたい事はソレだ。
彼はあくまでもコトリバコの受肉体だ。悠仁と同じく、呪物を取り込んで具現化した呪いの器に違いない。
悠仁の方はまだ宿儺の術式を使えるわけじゃないけど、実は悠仁より長く受肉体としての時間を過ごしている。術式が使えてもおかしくないはずだ。
『…多分、使えると思います。同化はしてないので全部は無理ですけど、制限している呪力分ならまぁ…』
「大体どれぐらい?」
『20%ですかね』
術式全体の20%か…。充分だね。
「よし、じゃあ明日その20%全部ひり出してもらおうかな」
『え』
ぽかんとする実に対して、僕はニッと笑って人指し指を立てた。
「折角出て来れたんだから、次は実践でしょ。術式を使っても姿を維持できるのか、後は術式とコントロールの精度確認。自分がどこまで出来るか知りたくない?」
彼の術式については、一年前のクリスマスの時に報告が上がっている。
その時に確認できたのは"他者への擬態"と"呪具の複製"だ。僕が予想するに、自分の呪力を変質させ他の物へと具現化させる術式なんじゃないかなと思っている。
コトリバコの術式は僕でも分からない。実には色々と縛りも掛かっているし、制限の中でどこまで立ち回れるのかも知っておかないとね。
『そうですね…。それに、俺ももっと強くなりたい』
手を固く握り締めた実が僕を見つめる。悠仁と同じ顔で、でも全く違う紫の瞳が僕を射抜くようにじっと視線を向けていた。
『俺も最終的にはコトリバコの呪霊と同化するんですから、それまでに力を少しでもつけて、コトリバコに呑まれないようにしたいです』
「っはは、そうこなくっちゃ!心配しなくても、実はコトリバコなんかには負けないよ」
あの時だって負けてなかった。そうだろう?
「じゃ、明日は一年全員と戦ってもらおうかな。勿論ガチだよ?」
『は、え?一年全員?』
「うん、全員」
『……』
あれ、実が固まった。
『…俺がちょっと頑丈だからって無茶なことを…』
「頑丈どころか普通の攻撃効かないでしょ実は」
『そうですけど…』
「まぁまぁ、実の方も殺し以外なら何してもいいからさ。ね?」
『…はぁ…』
渋々といった感じで了承する実にニッコリと笑ってから、頭を撫でてあげる。
さて、戻ってきた教え子はどこまで成長してるのか。見せてもらおうかな。
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2021年1月12日 16時