弐拾捌:久しぶりの再会 ページ29
実side
「うっは!まぁじだ、姿も呪力の質も悠仁のものだねこりゃ」
『顔が近いです、離れて下さい』
高専に戻ってから二人と別れて、俺は五条先生の元に来ていた。
一応この人は俺の監視人だからな、事情説明しないといけないんだよ。
「体の具合は?不調とかは無い?」
『問題ありません』
「コトリバコの様子は?」
『いつも通りです』
「なら良し!いやぁ良かった良かった。悠仁の声と姿とはいえ、これでやっと実とお喋りできるよ」
先生はそう言って、応接間にあるソファに座った。「こっちにおいで」と手招きされた俺も、『失礼します』と一言言って隣に座る。
「こうして話すのはあの時以来かな?」
『そうですね。…あの時はよく憶えてませんけど、あの場で貴方に祓われなくて良かったって思ってます』
「僕だって無闇に人を殺したくないからね。それに、実には僕の知らない力がある。だからこうして戻って来れたわけだし?」
『…そうですか。期待されているのは嬉しいですね』
ガスマスクを着けようとすると、「待った」と手を掴まれる。
横目で視線を送ると、先生は目隠しをした顔に笑みを浮かべていた。
「もうちょっとだけ教え子の顔見させてよ。一年以上見てないんだからさ」
『虎杖の顔ですけど』
「いいの!」
相変わらず変な人だな…。
ガスマスクを膝に乗せ、大人しくする。先生はニコニコしながら俺の顔をじっと見つめていた。
「それにしてもよく出てこれたね?」
『虎杖のおかげです。アイツの呪力を貰って、まぁ窮屈な部屋の窓一枚開ける事が出来たって感じですかね』
「成程ねぇ。じゃあコトリバコを受け入れて出てきたわけじゃあないんだ」
『はい。いくら俺の"目"で制御できてるとは言え、同化した時のリスクが未知数ですから』
「それもそうか。…あとはソレのおかげだね」
俺の右手を見ながら、先生は「その呪いは強力だからなぁ」と苦笑した。
「何がともあれ、君が喰い潰されず生きている事に安心したよ」
フード越しに頭を撫でられる。先生は心底安堵したような顔で、静かに言葉を続けた。
「お帰り、実」
308人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2021年1月12日 16時