ハートのトランプは幸せな夢を見る (ページ44)

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🖤初めて経験することページ44

エースside

マルフィと暫く話していると、マルフィが「そう言えば」とカレンダーを見つつこう言った。

「そろそろ帰省の時期になってきたねぇ…」
『帰省？』
「そうさ。私達のリクルーティングはハロウィンで終わってしまうだろう？今の私達にはハロウィンまで有効の魔法がかかっているから動けているが、終わった後元の世界に帰らないとこの世界で元の姿に戻ってしまう。だから一旦皆元の世界に帰る筈だが……、君は聞いてないのかい？」
『初耳だよそれ。ジャックからも聞いてない』

そんな期間があるなんて知らなかった。もしかしたら僕とジャックは頻繁に帰って、インクも注ぎ足したりして魔力を補給してるからかもしれないな。

『でも一旦ってどういう事？元の世界に帰って次のハロウィンまで会えないとかじゃないの？』
「いいや、私達にはハイタワーの管理とパーク内の見回りがあるからね。…こういう明るい場所には幸せな空気も満ちるが、同時にその光を渇望する悪いものも寄ってくる。そういうものから此処を守るのも私達の仕事だよ」

成程ねぇ…。そりゃ確かに魔力を一回貰ってこないと厳しそうだ。そうなると僕も一回女王様に調整してもらった方が良いかもなぁ～…

「そろそろアップルが帰省する筈だ。暫くは帰って来れないだろうから、先に顔を見せてあげると良い」

紅茶を飲み干して立ち上がったマルフィは、「私はこれで失礼するよ」と言って部屋から出て行ってしまった。その背中を見送って一人ぽつんと立ち尽くして、あ、アップルに会いに行こうって思ってから、僕もマルフィの後を続くように部屋を出た。
アップルの部屋は廊下の角だ。ちょっと遠いから少しだけ歩くと、"アップルポイズン"と書かれたドアをコンコンとノックした。

「どうぞ」

落ち着いた声が返ってきたのを確認してからドアを開ける。部屋の中にはコートを脱いで読書をしていたアップルが居た。

「どうした？エース」
『いや…マルフィから帰省のこと聞いたからさ』

そう言って近づくと、「あぁ」と彼は声を漏らして静かに本を閉じた。

「私は毒を新調しないと途端に腐ってしまうからな、時間がかかるからこの時期に帰省することにしているんだ」
『じゃあ明日ぐらいにはもう居ないの？』
「そうなるな。なに、すぐに戻るさ」

椅子に座るアップルの膝に腕を置いてじーっと座り込んで見上げると、アップルが「可愛い顔をしないでくれます？」なんてからかうから、僕はにへっと笑ってみせた。