ハートのトランプは幸せな夢を見る (ページ23)

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🍎一難去った後だからこそページ23

アップルside

薔薇の一件から数日、すっかり日常を取り戻した私達に、Vから一つの知らせが届いた。

「得物の定期検診…」

配られた手紙に書かれていたのは、普段己が武器とする物及び魔法の点検の知らせだった。最近はリクルーティング外での邪魔者が多かったからこその知らせだろう。
自室の机の上に手紙を置き、棚へと移動する。棚には私が女王様より授かった様々な毒の小瓶が揃えられている。私の武器となるものは毒と樹木の魔法だ、であれば常時飲んでいる毒を点検の際に提示した方が良いだろう。
数種類の毒の小瓶を懐に入れ、部屋を出る。向かう先は医務室だ。

「失礼する」

ひと声かけてドアを開ければ、広い室内にはメンズリクルーター全員が揃っていた。どうやら点検を受けている者と待機している者が居るらしく、待合所にはダルメシアとマルフィが控えていた。

「あ、やっと来たな林檎！遅いぞー！」
「医務室から私の部屋まで距離があるんだ。これでも早く出た方だぞ」
「ふふ、まぁ君の番はまだだからゆっくりしようじゃないか。…エイトフット～、足が出ているぞ～」
「うるせぇ！ビビリなやつが勝手に逃げようとするんだよ！」

仕切りのように下げられたパーテーションの下からぬめりのある蛸足が見える。今点検を受けているのはエイトフットか。

「…エースは何処だ」

エースだけではなく、ジャックも見当たらないが…

「二人はまだ仕事中さ。ジャックはもうじき来るだろうけど、エースは遅れると連絡を受けているよ」

「ほら」と見せられた携帯の画面には『"処刑長引くから遅れるって言っといて"』とメッセージが書いてある。…アイツ、私ではなくマルフィに連絡を入れたのか。

「おっと、顔が怖いぞアップル」
「…すまない」

この程度で妬いていても仕方ない。眉間を少し揉んでマルフィの隣に腰掛け、向かいに座るダルメシアに声をかけた。

「で、担当は？」
「ポライト！女子はスキャターが担当だって！」
「女子の方も大変なことが起きていたようだからねぇ。薔薇事件の時はスカーがやられたようだし」
「それは大変だっただろう。理性が失せた動物はさらに気性が荒くなる」

女子棟に行く機会は無いが、あちらもあちらで大変だったんだな。

「だー！誰か俺の足押さえてくれ！！」

さっきから見ていれば…本当に何をやっているんだ。暴れる足に手を焼くエイトフットに呆れつつ、3人で足を押さえにかかる。手早く終わらせてエースと話したいものだ。