🐶なんか音がしないか? ページ20
ダルメシアside
「えぇ…!?そんな事になってたんですか!?」
眼鏡を押し上げて驚くポライトに、アップルは小さく溜息をついた。今居る場所はポライトの部屋だ。ヴィーラの部屋の鍵はポライトしか持ってないから、会うにはポライトと一緒に行かなきゃいけなくてね!こうして話に来たんだけど……
「(さっきから談話室の方で音がするんだよな…)」
なんかガタガタうるさい音がする。僕は皆と違って魔力が無いに等しいから、誰かの魔力を感知したり出来ない。この耳と鼻でしか遠くの情報を知ることが出来ないから、この遠さだとよく聞こえなくて何をしてるのか分からなかった。
「…ということで、ヴィーラに直接薔薇のことについて話を聞きたい。同行してくれないだろうか」
「その、非常に言いにくいのですが……実はミスヴィーラは今出張中でして…」
「何だと…?」
「すみません!出張中の間の世話係として薔薇を見てたのですが、一週間前突然部屋から消えてしまって…!」
そう謝るポライトにアップルはまた溜息をついた。僕に「どうする?」って聞いてきたから、僕はこう答えたんだ。
「とりあえず一回部屋に戻ろう。…さっきから談話室で音がするんだ」
「音?」
「なんだか、騒いでるような音がさっきから…」
「…すぐ戻るぞ。ポライト、薔薇の飼育を任された身で済まないが、危害を加えていれば枯らす。いいな?」
「え、えぇ。リクルーターの皆さんの安全が第一ですから!ミスヴィーラには僕から説明しておきます!」
「助かる。香水は残念だったと言っておいてくれ」
「行くぞ」って声をかけられて、僕とアップルは部屋を出る。急いで談話室まで戻ると、そこには水の球の中に薔薇を閉じ込めてるエイトフットと、目や口から血のような真っ赤なインクを零してるジャックを抱えるエースの姿があった。
『っ!二人共…!』
「戻ったかっ、おいアップル!お前の毒でこの花枯らせ!俺の水じゃ動き封じるので精一杯だ!」
「最初からそのつもりだ…!」
薔薇…!?この部屋に来たのか!?ジャック、もしかして刺されて…!?
『ダル、ジャックの口に布を噛ませてくれ!僕の上着でいいから!』
「う、うん!」
すぐにエースが脱いで渡してきた上着の袖をジャックに噛ませる。ドロリと溶け出している顔は凄い苦しそうで、見てられなかった。
「(もう少し早く気づいていれば…!)」
こういう時、僕は自分のことが心底嫌になるんだ。
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2022年10月31日 1時