👿君は本当に、興味深い子だ ページ16
マルフィside
「すまない…見苦しい姿を見せてしまったね」
落ち着いてから涙を拭いつつ言うと、彼は『珍しい顔見れたからいいよ』なんてからかうように笑った。…久しぶりに見る彼の笑顔だ。嗚呼、本当に良かった。
『それにしても一週間も寝ちゃうなんてなぁ。マレフィセント様に感謝だよ』
うんと伸びをする彼は体を動かして立ち上がる。ふらっとよろめく彼を、私はまだ仕舞えない翼で受け止めた。
「一週間も寝ていたんだ。いきなり体に力が入ると、ふらつきもする。…暫くは動くことに慣れた方が良いだろうね」
『う〜ん……そうだね。このままじゃ斧も持てなさそうだ』
真剣に考える彼の声が、姿が、私を安心させる。ほっと安堵の息を吐くと、不意に翼に手の感触を感じた。
『それにしてもさ、やっぱりマルフィって強いよね。こんな立派な翼も、爪もあってさ』
優しく翼を撫でる彼がこちらを見て微笑む。その笑顔に、私の心に残った不安が消えていくのを感じた。どこかで思っていた彼に嫌われるのではという感情が、その笑顔一つで消えていく。…この安心感は、彼が人だった時の優しさによるものなのだろうか。
『それに角も立派でかっこいいじゃないか!何で隠してたのさ』
…え、つの…?そう言えば、毛布……な、い……。…………毛布がないっ!?
「み、見ないでくれっ!!」
『え、何で』
「い、嫌なんだ!鴉っぽくない角だから見せたくないっ、あ、あぁ…っ、毛布……!」
咄嗟に角を隠すように手で頭を覆って翼で隠れる。それでも彼は『見せてよ〜』なんて無邪気に言いながら四つん這いになって下から翼の帳の中に入ってきた。
『マルフィみっけ!』
「エ、エース!!」
両手を掴んでしっかりと握る彼は、まだ妖精の目になっている私の瞳をじっと見てきた。
『隠す必要なんか無いよ。だって僕は、おっきな姿の君を見てかっこいいって思ったんだから』
『まるでドラゴンだっだよ!マスターと似た姿でいいじゃないか!』なんて笑う彼。…あぁもう、そんな事言わないでくれ。
「…私は、かっこよかったのかい?」
呟いた言葉に、彼は頷いた。
『かっこよくて、最高に美しかった!』
……。……そうか。……ああ、そうだとも。私は、彼に思いっきり笑ってみせた。
「当然だ!私はマレフィセント様の次に美しい、特別な鴉だからね!」
君は本当に、私の悩みなどお構いなしに笑ってくれる。本当に興味深い友だ。
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2022年10月31日 1時