ハートのトランプは幸せな夢を見る (ページ2)

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🖤何でこういう始まり方するのさページ2

エースside

『ねぇ、あのさぁ…』

ジリリリッと鳴る目覚まし時計の音が部屋に響く。いつもならすぐに止めに行くんだけど、今日はどうもそうはいかないみたいだ。
僕はエース・ハート。ハートの女王に仕えるトランプ兵だ。女王様から1の数字を貰っている僕は、良くも悪くも一番を引き寄せる。そう、一番だ。つまり一番良い日もあれば、一番悪い日もあるわけで…

『(何で処刑が多くある日に限って！ジャックが居るんだ！！)』

ベッドですやすやと寝るジャックの手によって、僕はがっしりと体をホールドされて起きるに起きれない状態になっていた。
上着や帽子があるってことは、きっと深夜に帰ってきてそのまま僕の部屋で寝たんだろう。ジャックはよく僕の部屋に無断で入ったりしているから、間違えたわけでも無さそうだ。

『ジャック、おーいジャック～！』

揺らしても「う゛～ん…」って唸って起きやしない。叩き起しても「あと5分…」を繰り返して多分起きない。どうしよう……

『(今日の処刑、出なかったら確実に首が飛ぶのに…！)』

女王様のクロッケーのハリネズミを逃がした罪の裁判があるのに、処刑人が居ないんじゃ成り立たない。仕方ないから僕はジャックをくっつけたまま起きることにした。

『よっと……』

ジャックを何とか背中に移動させて、おんぶして起きる。服着る時少しめんどくさいけど、まぁ……たまには上着無しでもいいでしょ。
ご飯は食べてる暇無いな。じゃあ身支度だけして……

「なんて格好してるんだい！」

えー、駄目でした？ベスト姿でジャックを背負ったまま出勤したら、女王陛下に怒られちゃった。でも仕事出来ますよ？ジャック軽いし。

『首を刎ねるならジャック諸共お願いします』
「全く……お前が優秀じゃなかったらそうしてるよ！ちゃんと仕事は出来るんだろうね？」
『お任せ下さい。何があっても綺麗に首を切り落として見せましょう』

胸に手を添えて会釈程度のお辞儀をすると、女王陛下は「早く支度をおし」とだけ仰って裁判長の座に着かれた。良かった、僕とジャックは何とか首の皮一枚繋がったみたいだ。

『まぁ落ちても起きて恥ずかしい思いするだけだから、遠慮無く仕事しーよお！』

すやすやと眠るジャックをおんぶしたまま僕は仕事を始める。その後暫くこの時の光景が兵達の中で噂になって、ジャックにポコポコ叩かれる羽目になった。