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次の打ち合わせが行われるはずの、古き良き喫茶店の扉を開ける。
地元でも同じような雰囲気を醸し出す喫茶店が営業していたが、あの店はまだあるだろうか。
喧騒に飲まれ続けるうち、彼女とも行ったあの場所を思い出すことも無くなっていた。
通された席に着き、アイスコーヒーを一つ頼む。
運ばれてきたそれが汗をかいて、カラン、とひとつ音が鳴ったとき、店の扉がもう一度開き、規則的な足音がこちらに近付いてくる。
「こんにちは、」
ああどうも、そう言う筈の口は開いたまま、小さく息を吸った。
「少し、待たせすぎちゃったかな、」
あの日から変わらない笑顔で彼女が呟く。
「A…」
「担当者の名前見てびっくりしちゃった。でも、今回の取引が成立するかは御社次第ですよ、カワカミさん」
「……望むところです」
彼女は以前より大人びた表情で手元の資料を広げていく。
本来であれば感動的な再会なのだろうが、相変わらずというか二人らしいというか、こんな時まで競り合うことになろうとは。
「お手並み拝見といきましょうか」
「まずは商談からやな」
「その次は?」
「カワカミさんじゃない、俺との勝負」
「なぁに、それ」
「また後でな」
数年ぶりに対峙した彼女の凛とした姿に、また心惹かれていく自分がいた。
あわよくば初めての勝ちを、彼女の全てを手にすることが出来たならば。
「……その勝負、きっと拓朗の勝ちだよ」
「なんで?」
「そのうち分かるよ」
そう微笑む彼女は、全てを見透かしていたのかもしれない。
1時間後、俺と彼女のn回目の勝敗は、固く繋がれた手が示していた。
______________
リクエストふたつめ、「kwkmさんが絶対に勝てない幼馴染と、距離を置いたあと就職先で再会」のお話でした。
あまり恋とか愛とかそういった要素が少なめでしたが、このようなお話で大丈夫でしたでしょうか。
ご意見、ご感想など、いつでもお送りください。
リクエストはこちらで受け付けています。
そろそろこちらのページも残り僅かとなりましたので、これからいただいたリクエストは次作にてアップさせていただくことになると思います。
少し手間はかけてしまいますが、リクエストや感想等、お待ちしています。
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仮面を剥いだ私を:izw→←秀才の挑戦:kwkm◎request
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キタ(プロフ) - さちさん» コメントありがとうございます。まさしくミッシェルの「世界の終わり」を意識していましたので、分かっていただけて嬉しいです。拙い文ばかりですが、また更新していきたいと思いますのでよろしくお願いします。 (2019年10月29日 0時) (レス) id: 287acd08f7 (このIDを非表示/違反報告)
さち - はじめまして。「終焉のエピローグ」を読んで、初めてコメント致しましたm(_ _)m。ミェルガンエレファントの「世界の終わり」のような世界でquizknockとミッシェルが好きな私にはたまりません(*^-^*)。これからも楽しみにしています(^-^) (2019年10月28日 22時) (レス) id: 4daa7caae5 (このIDを非表示/違反報告)
キタ(プロフ) - やまうみ。さん» コメントありがとうございます。前作からということで長い間ご贔屓にしていただけて有難い限りです。例の件はこういうジャンルではままあることですので、仕方ないですね。なるべく更新し続けていけたらと思いますので、今後もよろしくお願いします。 (2019年10月14日 2時) (レス) id: 287acd08f7 (このIDを非表示/違反報告)
やまうみ。 - 初めまして、コメント失礼いたします。前作からずっと読ませていただいておりまして、どのお話も読みごたえがあり美しい文章にやられております。騒動があったなかで続けてくださる数少ない作者様の一人でいらっしゃるキタ様が憧れです、これからも応援してます! (2019年10月13日 19時) (レス) id: e8e6962fde (このIDを非表示/違反報告)
キタ(プロフ) - 佐野様>>コメントありがとうございます。良く見るお名前にびっくりしていますが、前作からお読み頂けていたなんて光栄です…!纏まりのない話ばかりですが、色々捻り出して更新してみたいと思います。佐野様の作品も楽しみにしています。 (2019年10月6日 22時) (レス) id: 287acd08f7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:キタ | 作成日時:2019年9月26日 19時