片恋のプレリュード【あんスタ・短編集】

ファッションショー/鳴上嵐 ページ5

「⋯⋯よし」



Knightsの衣装の整理を終える。

ライブも増えたので、最近はこうして各ユニット毎に衣装の整理もするようになった。整理しているとその時その時のライブの情景が思い浮かんで感慨深くなる。


ふと、整理し終わったKnightsのユニット衣装が目に入った。


⋯⋯ほんの少し、ほんの少しだけ私の興味が注がれてしまう。

ちょっと着てみたいな。

前にあんずちゃんがトリスタの衣装を着ていたのを見てから、実は羨ましいと思っていた自分がいる。
あんずちゃんはよく似合っていて、あれで下がスカートだったら本物の女性アイドルみたいだと思った。



「⋯⋯わあ⋯⋯」



上のジャケットだけ羽織ってみる。
やっぱり似合わなくて、ちょっと後悔した。

1番背丈が近そうな司くんのでさえ少し大きくて、着せられている感が強い。
衣装はかっこいいからやっぱり着る人なんだな。自分で納得させてて虚しくなった。

でも実際に衣装を着たまま軽く動いてみると、これが上質な生地を使っているのがわかる。

でも、固めの生地だからダンスの面で大変そう。動きやすくて良い、Knightsにあった生地って他にはないのかな。あそこの大きい布屋を今度探してみよう。





「⋯⋯あら？」



とか何とか考えていたら、扉が開いた。
ひ、と小さく悲鳴をあげてしまう。何だか悪いことをしたみたいで。


「あ、あの、なるかみくん、これは⋯⋯」


冷や汗がだらだらと落ちていく。よりによってKnightsの彼に見られてしまうなんて、何たる失態。

違うんです、衣装のこれからの生地とか考えていたら着ていたことを忘れて脱ぐの忘れたんです。
言い訳にならない言い訳を必死に心の中で唱える。



「もう、案外かわいいことするのねェAちゃん」


思いの外あまり咎められることもなく、ほっと息をついた。しかしそれも束の間。



「あんまりかわいいことしないでちょうだい、他に見られたら嫉妬しちゃうわ」



だから、これはふたりの秘密ね。そう言って、すっと人差し指を私の唇にあてられる。




こくこくと頷くことしか出来ない私は恥ずかしすぎて、もう二度と着ないと心に誓った。
⋯⋯多分。

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