唇に、さよなら。 (ページ19)

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１９：魅力的な人。ページ19

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｢お腹いっぱいだ〜。｣

2人で作った餃子は、かなり量があったはずなのに
パクパクと食べ進めてくれた紫耀くんのお陰で、綺麗に完食できた。

膨らんだお腹を擦りながら、美味しかったね。と、優しい微笑みを向ける紫耀くんに頷く。

ほんと、美味しかった。

一緒に作って、一緒に食べた餃子は
いつもの倍美味しく感じたし、食べ終えたあとの満足感が違う。

｢Aちゃん、どっか行きたいとこある？
せっかくだから遠くまで行っちゃおうよ。｣

遠足前の子供みたいに、
ワクワクした表情で私を見つめる素直な瞳。

ん〜、と特に行きたい場所が浮かばない私の様子を見て
何やらスマホで検索し始めた紫耀くん。

｢ねえ、地元まで帰っちゃうっていうのはどう？｣
｢えっ？｣
｢今からなら、まだ間に合いそう。｣
｢間に合うって、なにに？｣

手首に着けてる高そうな時計を確認したあと
すぐに立ち上がって、私の手を取り

｢行こっか。｣と、行き先を伝えないまま
戸惑う私の手を引いて駐車場まで連れて歩く。

｢紫耀くん、こんないい車乗ってるの？｣
｢ちょっとは俺の事、見直してくれちゃった？｣

白のカッコいい高級車を光らせた紫耀くんに
シンプルに驚いちゃった。

よく考えてみれば、このマンションもまぁまぁ家賃高いし
ひとりで暮らしてるってことは、それなりの収入があるってことだもんね。

紫耀くんって、ほんとすごいな。

生まれ持った感性とか、運とか、そういうのにも恵まれてるんだろうけど、それだけじゃなくてしっかり自分を輝かせるための努力をしてるっていうか。

きっと、人の何倍も自分と向き合ってきたんじゃないかな。と
真っ直ぐな目をしている紫耀くんを見てるとそう思う。

まだ、よく知っている。とは言えない間柄だけど
私が今まで出会ってきた人の中で
確実に、紫耀くんが一番魅力的な人だと思うんだ。