唇に、さよなら。 (ページ18)

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１８：不安そうな瞳。ページ18

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｢えっ？Aちゃん、明日誕生日なの？｣

小さく零した言葉を、拾い上げた紫耀くんが
俯きがちな私の顔を覗き込み、丸い瞳と目が合う。

｢あーうん、実はね。笑｣

無愛想な旦那との、冷めきった関係を見せてしまって
何だか居た堪れない気持ちになってる。

本来なら、明日は旦那も休みだっただろうから
ご飯くらいは一緒に食べてくれるかなって思ってたのに。

｢ねえ、それならさ･･･今日の夜、ドライブでもしない？｣
｢･･･っえ？｣
｢旦那さん、仕事で忙しいんでしょ？
俺で良かったら、Aちゃんのお誕生日お祝いさせてよ。｣

屈折のない笑顔を向けられ、返事に困る。

いいのかな。このまま紫耀くんとの時間を重ねちゃって。
優しい眼差しを受ける度に、私の心は紫耀くんの方へと傾きっぱなしだ。

迷惑、かけたくないんだけどな。

｢･･････駄目？｣

何も言わないまま、黙り込んでしまう私に
不安そうな瞳を覗かせるから、慌てて首を横に振る。

｢･･･行きたい、ドライブ。
ずっと家にいるのも、しんどいし。｣

ありがとうね、と伝えると
ホッとした笑顔を見せてくれた。

｢あ、そうだ。餃子、一緒に作らない？
2人で作ればすぐに食べれるよ。｣

その提案に乗ってくれた紫耀くんと
旦那のいない家で、ほのぼのとした餃子作りが始まった。

本来なら、地元の後輩とはいえ
特に関わりもなかったはずの男女が、こうして旦那の居ない時に
2人きりで部屋にいるなんて完全にアウトなんだろうけど

もう、そんな世間体なイメージはどうでもいいってくらいに
私の心は荒んでいるのかもしれない。

旦那だって、私と紫耀くんが仲良くしていても
どうでもいいって感じだろうし。

｢餃子とか、作ったのいつぶりだろ。｣

さっきから、やたらと大きな餃子を作っている紫耀くんは
楽しそうにパツパツに餡が詰められた餃子の皮を、不器用ながらに閉じていく。

｢ワンパクだね。｣

ふふ、と笑みを零す私に紫耀くんもあどけない笑顔を見せてくれる。

そんな、平和なひと時が
今の私の心を確実に彩ってくれている。