唇に、さよなら。 (ページ2)

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０２：八方塞がり。ページ2

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｢そうなんですよ。
でも、もしかしたら教室に置いてきちゃったかなって。｣
｢･･････教室？って、もしかして学校の先生なの？｣

思わず、大きくなる声。

だけどすぐ、平野くんの明るい茶髪が目に入る。

｢はは、学校の先生じゃないんですけど
ダンススクールの講師してるんですよ。｣

と、力なく笑う彼は
今、シンプルに鍵がなくて困っているんだった。

｢一旦戻ってみたら？それでも見つからなかったら
管理会社に電話してみるといいよ。｣
｢そうしてみます、すいません何か。
ありがとうございます！｣

忙しく私に頭を下げて、どうやら働き先のダンススクールへと戻った様子。

相変わらず、とんでもないイケメンなんだな〜と
当時の記憶を遡りながらエントランスを抜けて部屋に入ると
袋をぶら下げていた両手に、すっかり赤い跡がついていた。

まぁまぁ重い荷物だったのに、久しぶりの再会に驚いて
重いとかそういうの感じてなかったかも。

恐るべきイケメンは、時に人の五感さえも奪っていくのかな･･･なんて。

アプリで保存したレシピを見ながら
料理をしているとピンポーンと、突然なったインターフォン。

宅配便がくる予定は無いし、
それ以外の訪問者も思い浮かばないまま
画面を覗き込めば、何故かそこにはさっきダンススクールに戻ったはずの平野くんが映っていて。

｢･･･はい。｣
｢すいません、平野なんですけど･･･｣

バツの悪そうな表情で、画面に収まっている平野くん。

なんで私の部屋番号知ってるんだろ、と思ったけど
そういやさっき、お隣さんということが発覚したんだった。

｢そういえば僕、教室の鍵もキーケースに入れてて。｣
｢っえ、｣
｢教室の鍵は閉めてたんで、その後に落としたんだろうなってのは分かったんすけど｣
｢あー、なるほどね、うん。｣
｢その、管理会社の電話番号ってなんでしたっけ。｣
｢っえ？｣

彼の八方塞がりな状況に
何故かこっちまで戸惑ってしまう。

画面越しに話すのもアレだから
一旦、オートロックを解除して
平野くんに私の部屋まで来てもらうことに。