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太宰side


「貴方は何故こんなところにいるの?」

こんなところとは此処、横浜の地下の事だろうか。

「……私はマフィアの人間だったのだよ。
沢山、人の命を殺めてきた。

世間では私の顔が知れ渡っていてね。
ほとぼりが冷めるまで地下に籠らなければ
仕事は出来そうにない、と紹介先から言われたのだよ。」

「仕事?」

「あぁ、
私がまだ君の言う子供だった時
ある人に言われた。

人を助ける仕事をしろと。

だから私はそれがしたい。」

彼女はいい夢じゃない、と微笑んだ。

そんな彼女の膝の上にゴロンと頭を乗せる。
特に抵抗もしないのでそのまま下から彼女を見る。

微笑みを返されて、
恥ずかしくなり目を閉じる。

「眠れないな。
何か子守唄でも歌っておくれよ。」

少し挑発気味に言うと、彼女は
真に受けたようでなにがしかの歌を口ずさみ始めた。




『貴方は今どこで何をしていますか』

優しい声色と、歌のメロディー、
何よりも感情のこもった歌い方と歌詞が

まるで胸を締め付けるようだった。



織田作を思い浮かべずに居られなかった。





「太宰くん……?」

「……?」

「何で、泣いてるの?」


彼女に言われて初めて気がつく。
自分の目からはとめどなく涙が溢れていた。

涙を見せたくない、その一心で起き上がり
うつむいていると、
急に肩に触れられ引き寄せられる。

暖かい、彼女の体温が心地よく伝わる。
彼女はその華奢な体で自分の体を支えてくれた。
細くて小さな手で頭を撫でてくれた。

あまりに心強くて、余計に涙が溢れた。

「聞いて、くれるかな。」


私は返事を待たずに、
絶対に他人に話すことはないだろうと思っていた
織田作のことをぽつりぽつりと話始めた。

「誰にも話さない心算でいた。
Aには何故か話したくなったよ。」

そう笑いかける。
私も君のようにうまく笑えているだろうか。

「そう………。


今度は私の昔話、聞いてくれる?」


何処からか取り出した
レースのハンカチーフを私に差し出して
彼女は少し目尻に浮かんだ涙を手で上品に拭った。

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空き地@ktnk - 初コメ失礼します。とても面白いです!更新されることを待っています!頑張ってください! (2020年9月24日 7時) (レス) id: da313b2c7d (このIDを非表示/違反報告)
リンレイ - 凄く面白いですね!更新楽しみにしてます! (2019年10月21日 7時) (レス) id: 551bea7f08 (このIDを非表示/違反報告)
光希(プロフ) - めっちゃ面白かったです。更新復帰楽しみにしてます。 (2018年1月28日 16時) (レス) id: cfe2cc8d41 (このIDを非表示/違反報告)

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作成日時:2017年8月13日 3時

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