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「っ、……」

少し強く叩きすぎたのか、
強制的に右に傾けられた顔が歪められて
その状態で、彼の瞳がギロリと私を捕らえるように動く。

それでも構わず私は口を開く。
声が震えても、止まらず話続ける。

「死んでいい人間なんて、いるわけないじゃない、

殺されていい人間なんて、いるわけないじゃない…!!」

「ハハッ面白いことを言うね君は。
人はいつか死んでしまうと云うのに。」

いつの間にか彼の後ろに、彼の部下が集まっていた。

「あなたは勘違いしてる。
確かに、人はいつか死ぬ。

でも、誰かが死んで喜ばしい訳じゃない。
死を望まれている人がいていいはずないじゃない

人の死を笑う人間は、
大切な誰かを失った悲しみを知らないの

あなたも同じ、何も知らない子供同然よ。」

部下に銃を向けられる。
大丈夫、この数なら、避けられる。


「ならば、私は先刻君に頬を叩かれて
心身共に深い傷を負っているのだが

それはどう弁解するんだい?」

男は怪しげな笑みで私を見下す。
怖い。まるで狼だ。それでも私は止めない。

「じゃああなたに殺されたこの人はどうなのかしら。

使えない?笑わせないで!
どんな仕事だって、
ミスをした部下を是正するのは、
上司の役目でしょう?

それを殺しておいて
何が傷ついたよ!ふざけないで!」

私がそこまで言うと、男は引き金を引いた。

が、業とずらしたのか左頬と耳を掠めて
私の長い髪の毛を束ねていたゴムがバサリとほどけた。

耳と頬から血が垂れる。
痛みが遅れてやってくる。

男の部下の人達が銃をガチャと鳴らす。
それを男が制止すると、部下の人達は銃を降ろした。

「気が強いお嬢さんだ。」

そう言うと銃を降ろして、
今度は優しく、でも怪しげに笑う。

その笑みに少しどきりとする。
恐怖、恐らくその感情が一番近い。

固まったまま動けないでいると
男は私に歩みより包帯だらけの手で私の傷に触れる。

私の血を拭うと男の包帯に私の血が滲む。

「ッーーー…!!!最ッ低!!」

触れられた傷が少しズキリと染みた。

いや、そんなことはどうでもいいのだ。
私が動揺しているのは男の次の行動だ。

私はたまらなくなって
もう一度男の頬をひっぱたいて逃げ出す。
ただ我武者羅にリュックを抱えて走った。

兎に角遠くへ。

気持ち悪い
あの男から離れたかった。
初対面の女にあんなことするなんて

無意識に涙が滲む。

こんな形で奪われると思ってなかった。

私のファーストキス。

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空き地@ktnk - 初コメ失礼します。とても面白いです!更新されることを待っています!頑張ってください! (2020年9月24日 7時) (レス) id: da313b2c7d (このIDを非表示/違反報告)
リンレイ - 凄く面白いですね!更新楽しみにしてます! (2019年10月21日 7時) (レス) id: 551bea7f08 (このIDを非表示/違反報告)
光希(プロフ) - めっちゃ面白かったです。更新復帰楽しみにしてます。 (2018年1月28日 16時) (レス) id: cfe2cc8d41 (このIDを非表示/違反報告)

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作成日時:2017年8月13日 3時

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