緊迫 ページ4
「おぉ、旨そう…」
七瀬が漏らした感嘆の声に、皆も頷いた。ミートパイとケーキ2種類が、中央テーブルに置いてあるのだ。
今までは給食なんかにも出そうな献立だっため、こう凝ったものは初めてだ。
「アレルギー食材はどうしたら…」
何のことかまでは言わず、滝十君はそう呟き目を泳がせた。今まで、私達のアレルギー食材は出なかったけど…食材にまで警戒しないといけなくなったのだろうか。
『ご安心ください! アレルギー食材は使用せず、上手く作っていますよ! 』
…サイコは、どれだけ私達のことを知っているんだろう。
少なくとも、全員の名前と大体の個人情報とアレルギー。こう考えると、私達が不利ということが嫌にわかる。
私が思考を絡ませている内に、サイコの声が響いた。
『昨日は推理でお疲れでしょう! ですので、朝食は少しばかり手の込んだものにしました! 』
そう言われると、このメニューにも納得がいく。サイコは『それではご自由に! 』と、すんなり放送を切った。
さてと、何処で食べようか…
「皆、ちょっといいかな。」
弐筱君の落ち着いた声が、共同スペースに滑らかに響いた。視線を移すと、一野さんに寄り添う弐筱君がいた。
「…提案があるんだ。だから、今日は朝食皆で食べない？」
…さっきの話か。さっき聴いていたのは、恐らく弐筱君と七瀬と私だけだもんな。
「勿論。」
私は答えて、8分の1に切り分けられたミートパイと、オペラと綴られたチョコレートケーキを、小皿に1つずつ取った。
「一野さん、話せる？」
全員が、中央テーブルの周りに座った。置かれっ放しの大皿には、既にミートパイもケーキも無い。
緊迫した表情、落ち着いた態度。多種多様な、皆の様子が見える。
一野さんは、わかりやすく緊張している。11人の前で話すことは、私も少しばかり緊張する。一野さんは普段あまり自己主張をしないし、尚更そうなのだろう。
「は、はい…今日は、提案がありまして…」
後半から小さくなっていく声に、皆よくよく耳を澄ませる。こういうところを見ると、本当に良い人達が集まったなぁと思う。
気になることと言えば、六原君がどう反応するかだ。
「情報を、密告…って言うんですかね…あの、それぞれチームのことを教え合えば、推理がちょっと簡単になるんじゃないかな…って。」
イメージの問題か、一野さんは「密告」を「教え合う」に言い換えて説明した。わかりやすかったし、難しい質問の余地も然程無い。
「"仲良しチーム"を公開する…ってことかい？」
千山君が、控えめに手を挙げて言った。
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