82(亮平Side) ページ32
息が苦しい。
誰かが腹の上に乗っかって、自分の首を絞めている。
それが、自分の被害妄想に過ぎないことは、自分でもよく分かっている。
これは、実際にされていたことだけど、あの人はもうこの部屋を出て行ったはずだから。
でも、それはやけに生々しかった。
部屋の中は酷い匂いだった。
何か腐ったような饐えた匂いと生々しい鉄臭い匂いがすっぱい汗の匂いと、知らない皮膚の香りと混じりあった穢れた空気が部屋を充たしていた。
ギチギチと皮膚がちぎれるくらいきつく食い込んだそれはチリチリと痛み、気道が塞がれているため上手く酸素が取り込めない。
頭の中は恐ろしいくらい激しく助けを求め、同時にこのまま殺してほしいと願っていた。
息を整える暇もなく突如呼吸を絶たれたため、当然数十秒足らずで限界がやってくる。
電気もついていない真っ暗闇の室内は生理的な涙と感情的な涙で線も色彩もグチャグチャに混じり、頭がぼんやりとしてくることで白く霞んでくる。
苦しくて口の端から垂れた唾液の濡れた感触も、手にこびりついた血液が固まっていく感触も段々と鈍く、感じられなくなっていった。
何度も何度も……
あの人は俺を殺そうとした。
―― でも、それも今日で終わりだと思った。
抵抗を諦め、意識を手放そうとしたとき、突然瞼の裏が焼けるように眩しく照らされた。
目を開けた時、目に映ったのは見知った自分の部屋の照明と自分を覗き込む見知らぬ男だった。
いや、俺はその男を知っている。
亮平「れんっ……」
彼の名を呼ぶと、自分の声が随分と掠れ、弱々しく醜い声をしていることに気が付いた。
思えば確かに喉が焼けるように痛む。
唾を飲み込むと、ツキリと染みた。
おまけにベッドのシーツに縫い付けられたように体が重く、動かせない。
あぁ、そっか。
俺、風邪だったんだ。
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雛(プロフ) - まりなさん» お返事遅くなり、申し訳ありません(汗)コメントありがとうございます！本編が終わってからになりますが、リクエスト書かせていただきます。こちらこそ、これからも末永くご愛読のほど宜しくお願い致します。 (2022年1月25日 20時) (
レス) id: 9f89b51e27 (このIDを非表示/違反報告)
まりな - 初めまして、雛さんの作品をいつも楽しみに読んでいます！リクエストなのですが、このお話の中に出てくる登場人物の過去編や未来編、だてさくメイン編も読んでみたいです！宜しければ書いてくださると嬉しいです！ (2022年1月22日 13時) (レス) id: 4c6ff4de06 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雛
| 作成日時：2021年9月19日 20時
