51 ページ1
俺は何だか拍子抜けして唇を尖らせた。
蓮「ねぇ……もっと喜んでくださいよ。あなたが望んだとおりに事が進んだでしょう？」
俺がそう言うと、亮平はパッとこちらを向いた。
その表情は、まるで俺はそんなこと望んでいない、と今にも言いだしそうな顔だった。
彼は数秒の間俺の顔を見つめたまま固まり、我に返ったようにハッと前を向いた。
信号が青に変わったのだ。
車が急発進する。
彼の細い太ももが痙攣している様に見えた。
小刻みに震えるように痙攣する足。
亮平「……これ以上なく喜んでるよ。」
そして横を走るバイクのエンジン音に紛れてしまいそうな小さな声でそう呟く。
亮平は俺に聞かせるつもりがなかったのかもしれないが、耳が良い俺には、はっきりとそう聞こえた。
―― これ以上？以上も何も、1ミリも喜んでないくせに。
蓮「俺の目が悪いだけかもしれませんが、あんまりあなたが喜んでいる様に見えないです。」
亮平「そう？じゃあ、蓮は目が悪いんだ。俺は今までにないくらい喜んでるのになぁ。酷いよ？」
蓮「じゃあ、お祝いにステーキの1つでも奢ってくださいよ。」
亮平「まぁ、いつかはね。」
そう言って亮平はアクセルをぐっと踏み込む。
左車線を走っていた車をあっという間に追い越し、交差点を右折する。
車内は遠心力でグラリッと大きく揺れ、俺は助手席側のドアガラスに頭をぶつけた。
蓮「あぁっ、いって……」
いつもより運転が荒い。
元々、そんなに上手くも無い彼の運転がいつも以上に荒い。
まるで何か迫ってきている者から逃げているみたいだ。
ハンドルを掴む手は力んで白くなっているし、腕には青い血管が浮き上がっている。
どんどん早くなって行くその呼吸と、激しく上下する肩を見て、彼が過呼吸ぎみになっていることに気が付く。
どうしてこんなに肩に力が入っているのだろう。
―― 何が彼をこんな風にさせているのだろう。
蓮「ねぇ……」
それは家に帰ってきてからも変わらなかった。
亮平はずっとおかしいままだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 217人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SnowMan」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
雛(プロフ) - まりなさん» お返事遅くなり、申し訳ありません(汗)コメントありがとうございます！本編が終わってからになりますが、リクエスト書かせていただきます。こちらこそ、これからも末永くご愛読のほど宜しくお願い致します。 (2022年1月25日 20時) (
レス) id: 9f89b51e27 (このIDを非表示/違反報告)
まりな - 初めまして、雛さんの作品をいつも楽しみに読んでいます！リクエストなのですが、このお話の中に出てくる登場人物の過去編や未来編、だてさくメイン編も読んでみたいです！宜しければ書いてくださると嬉しいです！ (2022年1月22日 13時) (レス) id: 4c6ff4de06 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：雛
| 作成日時：2021年9月19日 20時
