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54話 ページ4

ゾムさんがいることを忘れ男性の前でしゃがみこむ。
思い切り身体を打ち付けた様子で、口から血を流しながら目を閉じている。

私がちゃんと、この人に説明しなかったから。
私のせいで、この人が怪我を…!

両手を男性の前にかざし小さな声で呪文を唱える。
あの時のグルちゃんのように私のせいでこうなってしまった。
罪悪感から止まっていたはずの涙がもう一度頬を伝った。
パァっと白い光が目の前の男性を包み込む。
治って…!治って!
そう祈るように呪文を唱え続ける。

「A…っ」

後ろからゾムさんの声が聞こえるが返事を返す余裕もなく目の前の男性に魔法を唱え続ける。
しばらくすると歪んでいた男性の顔がゆっくりと落ち着いて行くのがわかった。
そしてぱちりと目を開けて私を見つめてきた。

「ごめん、なさい。傷つけてしまって…」

私のその言葉を聞いた瞬間、ハッと目の前の男性が息を呑む。
ゆっくりと立ち上がった彼は私に手を伸ばしてきた。
ビクッと肩が震えたが、先ほどの殺気はなく彼の手を私は受け入れる。

「ゾムさんが言ってた人…」

そう言葉を発した彼の手をゾムさんが振り払い私を後ろから再度抱きしめた。

「えっ…ゾムさん…?」

ホッと心が安らいだのを感じたが、冷静になってみて私は自分の行動に震えた。
わたし、ゾムさんと男性の前で、魔法を…

頭の中では広場の真ん中で殺されたお母さんの姿が脳裏に浮かぶ。
…っわたし、なにして…!

ゾムさんの身体を拒否するように身体を振り払い、2人から距離を離す。

目の前の2人は歪んで見えて涙を流しながら一歩ずつ私は後ろに下がる。

「ちが、わたしは、彼を治したくて、」

さっきは喋れたのにまた言葉が出なくなってしまった。
私、殺されてしまうのだろうか。
ゾムさんに自分が魔女であることを言わなかったのだから当然なのだとどこか心の隅で諦めてしまった。

ゾムさんに、殺されるならいいのかもしれない。
私のせいで怪我をした男性も治すことができた。
目の前のゾムさんを見つめ小さな声で「ごめんなさい。」と呟く。
そっと目を閉じ次に来るであろう痛みを待つ。

でも、私が想像した痛みは来なくて
その代わりに私を今度は離さないと言わんばかりの強い力で抱きしめた。

「A。ありがとうな。」

私が思っていた言葉とは真逆の言葉がゾムさんから聞こえた瞬間、目の前が真っ暗になり私の意識はそこで途絶えた。

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成瀬 - わあああああああああ!更新嬉しいです!でも更新ゆっくりで大丈夫ですよ!更新されるだけで嬉しいので( ´ω`)これからも頑張ってください!楽しみにしてます!! (2019年8月18日 22時) (レス) id: 1c8c0eeede (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - 更新をとても楽しみにしていました! 私の大好きな推しが幼なじみの設定で、見つけた途端に発狂してしまいました… これからも楽しみにしています! 頑張ってください! (2019年8月18日 2時) (レス) id: ed8d61f0bf (このIDを非表示/違反報告)
リンク(プロフ) - ^黒ω猫^様、そらまめ様》感想ありがとうございます。完全な不定期更新で申し訳ございません。今後も読んで頂ければ幸いです。宜しくお願い致します。 (2019年8月17日 21時) (レス) id: ffa34a5a29 (このIDを非表示/違反報告)
そらまめ - すっごく面白く一気に読んでしまいました! 更新頑張ってください! (2019年7月22日 14時) (レス) id: 04a77244fd (このIDを非表示/違反報告)
^黒ω猫^ - 面白いですね。魔女系好きになりました! (2019年6月27日 16時) (レス) id: f1451596cc (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:リンク | 作成日時:2019年1月13日 11時

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