だらしない妻と神経質な夫

大丈夫 ページ30

赤く腫れた手首、口角にある打撲痕、胸元の大きな鬱血。どれもこれもあの男達にされたこと。ブラウスが破かれてインナーがハサミで切られる恐怖。優しくなんてされなかった。ただ1つ、最後までされなかったことだけが救いで、カンタくんが居なきゃきっと諦めてたと思う


『ごめんなさい...遅くなりました...』

カ｢口...痛い？｣

『痛い...』

カ｢頑張ってくれてありがとう｣


その言葉にホッとして、身体から力が抜けて、崩れ落ちる前にカンタくんが捕まえてくれた。優しく抱きしめて頭を撫でてくれるその手に安心するんだ。


カ｢怖かったね...ごめんね...｣

『こわ、かった...』

カ｢うん｣

『抵抗...するの痛かった...』

カ｢うん｣

『今回は...私頑張れたよ...』

カ｢うん、ありがとう...｣


ひとしきり泣いて、もう涙も出なくなった頃、キイチがチョコをくれた


キ｢ん、｣

『チョコ貰って泣き止むのガキくらいよ？』

キ｢うるさいよ｣

ト｢大丈夫か？...いや、この質問って雑魚だな...わりぃ。｣

『大丈夫です。嘘じゃなくてほんとに。今回はもう平気です。もうカンタくんが居るから...前向けます。』

ト｢やっぱり紹介してよかった｣

『最後までされてませんし、カンタくんが助けてくれたので...ただ、動画に出るカンタくんの顔に傷付けてごめんなさい。』

カ｢俺階段から落ちたのよ｣

『...へ？』

ト｢携帯見てたら最後の1段踏み外したってよ？｣


私の旦那さんの優しい嘘。これだから好きになったんだ。


『...ありがとう』

カ｢Aはしばらく動画おやすみしようね｣

『分かった』

ふ｢あのね、ふぅは落ち込んだ時わー！！って叫ぶからね、怪我治ったらカラオケいこ？｣

『ん、約束。』

ふ｢やった！｣

ト｢ふぅ歌得意だっけ？｣

ふ｢音楽はオール2！｣

ト｢自慢気に言うのな？笑｣

P｢Aが元気ないと家は静かで困る｣

『夫が居るんで口説くの辞めて下さい』

P｢傷が痛むからあんま喋んない方がいいんじゃないかな？｣

『お気遣いどうも』

ま｢怒ってるじゃないすか笑｣

キ｢1日1回怒ってるとこ見ないと調子出ないわ｣

『そんな怒ってないし』

カ｢ねーえー！俺に構ってぇ？｣

『ふふっ、変なの笑』


いつも通りにしてくれる″家族″に感謝だ。もう後ろは振り返らない。こんなに早くに前を向けるのは間違いなくカンタくんのおかげ。手を握ると彼はいつもの様に指輪をくるりと回し始めた。

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