街の住人２ ページ5
空気を変えたのはミティだった。救いはミティがＫＹだったことである。
私は、オレイユと顔を合わせるのが辛いまま、ミティに街案内を頼み、家を出たのだった。
オレイユは何も言わず、私とミティを見送った。
「どこから回ろうかな〜ぁ？」
「決めてなかったのね」
思わず突っ込んでしまった。
てっきり旅行先のツアーのように徹底しているのかと思っていたが、どうやら何も考えていなかったらしい。天真爛漫な彼女の辞書に計画性という言葉はないのか。アホ可愛いから許すけどさ。
「おっアインスー！」
ミティが手を振っている相手は、犬の──ぬいぐるみのワン太──少年だった。
彼は大きな釣り竿と、それに見合う大きなバケツを手にしていた。
(シュピールの人形たちは皆名前がかっこいいなぁ)
尊敬する。と同時に、過去の自分のネーミングセンスを呪いたい。ワン太ってなんだ、ワン太って。
「アインス、どこ行くの？」
ミティは彼をしたしげに話す。どういう関係なのだろう。
恋人とか言ったらテンション上がっちゃうなーぁお姉さん！
「んー川。ミティ、その子はだぁれ？ 新人さん？」
アインスの口調はゆっくりだった。聞いていて眠くなる、お経のような速度。
「うん。この子、『ドゥオールの迷い子』！」
「はじめまして、Aといいます」
「へぇ、君が……はじめまして。よろしく」
ミティが『ドゥオールの迷い子』を紹介時に話したのは衝撃だった。
「驚かないんですか？ 『ドゥオールの迷い子』」
異世界人だと聞いたら少しは驚くと思っていたのだが。
「うん。珍しいけど、根本的なところは、変わらない。……一緒」
うん、大変分かりづらい説明ありがとう。
えーっと、この街の人形たちも、元々は外の世界から連れてこられた。だから当時の意識があってもなくても関係ない、ということで合ってるかな？ あまり自分を特別視するなという警告にもとれるけれど。
物静かな彼は、もう行くね、と一言告げると、川の方角へ向かっていった。
無表情で反応が薄いというのが第一印象だったが、遠ざかる後ろ姿が、少し浮足立ってるのを感じさせられた。どれだけ釣りが楽しみなんだ。
「アインスはいい子だよ」
アインスの背を見送りながら、ミティが私に言う。
「うん。そんな感じだね」
私も同意した。引っ込み思案な性格の私と、物静かなアインス。うん、仲良くなれそうである。
今度、アインスを遊びに誘ってみようか。
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葉月だんご(プロフ) - 麦カケさん» 感想ありがとうございます〜！ 私も書いてるとき、主人公の正体をバラそうか隠そうか迷いました（笑） 今後の展開にもぜひ、ご期待ください(*´ω`*) (2020年12月30日 23時) (
レス) id: 1261bb0f48 (このIDを非表示/違反報告)
麦カケ(プロフ) - 初めまして。人形達が持ち主だって気づいてない所がせつないです(でもそう言う設定好きです)これからどう言う展開になっていくのか気になります。無理せず作者様のペースで頑張ってください！ (2020年12月30日 17時) (レス) id: ea0439ca7f (このIDを非表示/違反報告)
葉月だんご(プロフ) - 千々さん» コメントありがとうございます♪ お気に召していただけたようで何よりです！ この感想を糧に引き続き更新がんばりますので、お付き合いいただけたら幸いです〜(*´艸｀*) (2020年3月30日 17時) (レス) id: 3d624ae683 (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - オリジナルでいい作品を久しぶりに見つけられました！ 人形たちの微笑ましい生活をこれからも見ていきたいと思います！ (2020年3月15日 13時) (レス) id: df88b28f21 (このIDを非表示/違反報告)
だんご(プロフ) - ぐうたら猫さん» コメントありがとうございます〜！ 気に入っていただけたようで何よりです♪ ネコのぬいぐるみってカワイイですよね← (2020年1月8日 2時) (レス) id: 3d624ae683 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：葉月だんご | 作成日時：2019年10月19日 12時
