お人好しの人見知り ページ10
「……折ってない。急に折れた」
「何故嘘つくんですか」
自然現象で箸が折れるわけがないことはわかっている。
そしてAさんはあの唯さんに鍛えられているため、箸を折ることくらい造作もないほどの力はあるのもわかっている。
二度のバキバキ音で確実に箸二本とも折れただろう。
それだけこの人にとっては、天女の行いは許せないことだったのだろう。
もちろん俺達も許す気はないが。
Aさんは人見知りのはずなのにどこかお人好しだ。
「……御馳走様でした」
何事もなかったかのように手を合わせて静かに食事を済ませた。
ほとんど食べ終わった時に箸を折ったので、食事自体に支障はなかったらしい。
折れた箸については後で言い訳を考えよう。
「…あ、言い忘れてましたが明日から貴女の監視役に作法委員会がなりました」
「…？」
作法委員会のメンバーがわからないAさんは首を傾ける。
「作法委員会委員長は立花仙蔵先輩…こんな感じの人です」
三郎はその辺にあった紙と筆で立花先輩の似顔絵を描いて見せた。
何気に三郎絵上手いな。
「……私をここに連れてきた人だ」
「ご存知でしたか」
Aさんの口ぶりから、やはり忍術学園に来たことは本意ではなかったことが伺える。
ちなみに今日の夜、就寝時にAさんの監視をするのは自分だ。
5.6年生で集まって男気じゃんけんで決めた。
一人勝ちした俺はその後普通に5年生達と集まり、
『本当に残念だよ、やりたくない、なんで俺が天女なんかの就寝の監視をしなきゃいけないのだ』←三郎にしか聞こえない棒読み
『………』
『えっ三郎なんでそんな怖い顔してるの』
『怖い顔？まさか、お前と同じ顔だよ雷蔵』
『いや雷蔵はそんなやばい顔はしない』
なんてやりとりがあったのはAさんに言う必要はないだろう。
言おうが言わまいが、多分この人にはバレる気がする。
鼻が特殊らしいから、誰がいるのかわかるのだ。
この先雷蔵と三郎が一緒にいる時に会っても間違えたりはしないだろう。
ある意味俺達5年生にとってはAさんは待ち望んでいた人なのではないか。
「そういえば全校集会がありませんでしたが、立花先輩達には自己紹介はされたのですか？」
「……いや、多分口を開いてすらいない」
Aさんはあくまで冷静に、静かにゆっくりと首を横に振った。
「「………」」
人見知りとは厄介なものだと思った今日この頃。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 591人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「忍たま」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
HANON(プロフ) - 不透明どろっぷ。さん» ありがとうございます。更新はめちゃくちゃ不定期なので、ふと思い出した時に見ていただけたら嬉しいです。 (2月8日 23時) (
レス) id: 42f4c6aba7 (このIDを非表示/違反報告)
不透明どろっぷ。(プロフ) - 3年ぶりくらいに見てみたら結構進んでた…！今見返してみたからこそわかるネタとかも結構あって面白かったです。続き楽しみにしてます。 (12月22日 23時) (レス) @page25 id: f6e73ed9d2 (このIDを非表示/違反報告)
HANON(プロフ) - あまねさん» 見つけてくれてありがとうございます (11月5日 12時) (レス) @page24 id: 42f4c6aba7 (このIDを非表示/違反報告)
あまね(プロフ) - すきやっと見つけた (10月25日 20時) (レス) @page24 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
HANON(プロフ) - 凪疾さん» 頑張ります！コメントありがとうございました。 (10月22日 23時) (レス) id: 42f4c6aba7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：HANON | 作成日時：2019年9月26日 23時
