保健委員の2人 ページ6
「………鉢屋先輩？と、貴女は……」
「伏木蔵！」
保健室に入って来たのは、保健委員1年生の伏木蔵だった。
伏木蔵は三郎を見て一瞬怯んだが、その視線はすぐに別の人物へ移された。
思ったより怯えられていないのは、単に三郎は天女の被害が比較的少ないからだ。
「天女様、ですか？」
伏木蔵の彼女に対する姿勢は、三郎に対するそれと同じようにどこか怯えていた。
1年生が1番天女の被害が大きかったので当たり前だが。
顔の見えない彼女は何を思っているのか、三郎ですらわからない。
だが気のせいだろうか。
伏木蔵から感じるのは、怯えだけではない気がする。
むしろ怯えとはある意味反対に位置するような感情すらある気すらする。
一言で言えば「困惑」「驚愕」「疑惑」だ。
そしてそれは、天女の噂を聞いていた自分に芽生えたものと酷似している。
“Aときり丸は一緒にバイトをしていた”
これが本当で、もし伏木蔵のいる1年ろ組も、それを通して朝霧Aという少女を知っているとすれば気のせいではなくなる。
しばらくの沈黙の後、伏木蔵の答えを出すかのように狐のお面の彼女は口を開いた。
「………こんにちは、伏木蔵」
「っっ！！Aさん……！」
子供というのは時に鋭い。
声を聞いただけで、自分の知っている彼女だと分かった。
伏木蔵の目からはポロポロと涙が溢れた。
「………痛い？」
涙の理由がわからないAは、せめてという思いで伏木蔵の涙を指で優しく拭った。
「………出てってくださいこの学園から」
だが、伏木蔵の口から出た言葉は予想だにしなかった言葉で、三郎ですらも目を見開いた。
Aの手は振り払わず、何かを押し殺すような声で言った。
「……この学園にはきり丸も乱太郎達もいます。貴女の知っている人が多いと思います。でもダメです、ダメなんです。
ここにいたら、貴女は殺されてしまいます」
「………」
Aは伏木蔵の言葉を聞いて、困惑するわけでも怯えるわけでもなく、ただひとつの感情が芽生えた。
この感情は誰にも存在するもので、決して彼女自身も今まで味わなかったわけではない。
「………何故？」
「何故ってそれは……！」
その先の言葉を出すことはなかった。
伏木蔵は目の前で突如変わった景色に言葉を失ったから。
「伏木蔵に何をしたんですか天女様？」
「………」
いつのまにかAの首には、一本の苦無が向けられていた。
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HANON(プロフ) - 不透明どろっぷ。さん» ありがとうございます。更新はめちゃくちゃ不定期なので、ふと思い出した時に見ていただけたら嬉しいです。 (2月8日 23時) (
レス) id: 42f4c6aba7 (このIDを非表示/違反報告)
不透明どろっぷ。(プロフ) - 3年ぶりくらいに見てみたら結構進んでた…！今見返してみたからこそわかるネタとかも結構あって面白かったです。続き楽しみにしてます。 (12月22日 23時) (レス) @page25 id: f6e73ed9d2 (このIDを非表示/違反報告)
HANON(プロフ) - あまねさん» 見つけてくれてありがとうございます (11月5日 12時) (レス) @page24 id: 42f4c6aba7 (このIDを非表示/違反報告)
あまね(プロフ) - すきやっと見つけた (10月25日 20時) (レス) @page24 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
HANON(プロフ) - 凪疾さん» 頑張ります！コメントありがとうございました。 (10月22日 23時) (レス) id: 42f4c6aba7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：HANON | 作成日時：2019年9月26日 23時
