笑えないことばかりだったよな ページ37
「鬼ごっこしよう」と云う子供の提案をのみ、じゃんけんで負けた芥川は鬼役を被る事となった。
芥川の幼少期、遊び相手となるような同年代の者は居なかった。生き残る為に妹と共に歳の近い子供達で徒党を組んで生活はしていたが、保護者も存在しない彼等に遊戯に興じるような余力がある筈もない。
「�犁瓦瓦辰貝瓩箸浪燭澄�
「え？ ……鬼は十秒その場で数えて、標的を追いかける。捕まった標的が次の鬼になる。その繰り返しだ」
「承知」
随分と簡単な規定だ、と芥川は思った。ただ一人の標的が逃げ回れる領域は公園内のみ。攻撃ならばともかく、捕らえるだけとあっては異能を使えば一瞬で片付いてしまう勝負だ。故に、芥川は己に異能の使用を禁じる事にした。
「……」
「……」
「芥川さん、数字は声にして言ってほしい」
「六、七、」
「もうそんなに数えてたのか」
子供は一本の灯に仄白く照らされた空間外の暗闇に紛れた。少し戸惑うように数える男の声が、脱兎の如く逃げる子供の耳に届く。最後に「十」と呟いて、芥川は緩やかに駆け出した。
□□□
子は体力にかけては永久機関である。芥川は身を以てそれを痛感した。追うのも逃げるのも、戦闘と遊戯では使う膂力がまるで違う。
それ故に。
芥川は、ぜえ、と息を付き、顎を伝う汗を手の甲で拭った。どうしたって暑い。日が出ていない為か、蒸し暑い空気がじめじめと肌に纒わり付くようで、小脇に抱えていた外套が重石のようだった。
くすくす押し殺した笑い声が頭上から降ってくる。子供は回転塔の頂点から飛び降り、突進するように芥川の細い胴に抱き着いた。
「捕まえた！」
芥川は子供を受け止め、ああ今は此奴が鬼だったのかとぼんやり考えた。もはやどちらが追う方で追われる方なのか判らなくなってきたところだった。
「楽しいか」という問いには、元気な肯定が返ってきた。
「普段は一人で外出できないんだ。室内では思い切り走り回れないから、こうして動くのが楽しい」
楽しそうな子供の頬は赤みを帯び、額には汗が浮かんでいる。機嫌が頗る良いらしい子供は弾んだ声で「芥川さん、芥川さん」と話し掛けた
「何だ」
「もっと芥川さんと一緒に居たい。だから、」
「また会おう」か、「また遊ぼう」と言われたのか、とにかくその後に続いた言葉は、芥川の心に深く爪をたて、ぷつりと被膜を裂いた。どろりとしたものが流れ落ちる感触。芥川はその感情の名を知らぬまま、静かに目を伏せた。
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ロト - こめ(元団子)さん» お久しぶりです！最近わりと多忙でした…少し時間が空いてきたので見てみようと思えば結構更新されてて嬉しかったです！癒されました〜！ (2019年8月25日 23時) (
レス) id: 84710b8cd8 (このIDを非表示/違反報告)
こめ(元団子)(プロフ) - ロトさん» ロトさん！ お久しぶりですね！ そうです娘主は奔放な子供なので自由に遊び回っては国木田さんに叱られ 最終的には追いかけ回されますw (2019年8月25日 22時) (レス) id: a3e8a2be57 (このIDを非表示/違反報告)
ロト - 近所迷惑(社員寮)……つまり、国木田さんの胃痛が増すんですね分かります。 (2019年8月25日 1時) (レス) id: 84710b8cd8 (このIDを非表示/違反報告)
こめ(元団子)(プロフ) - 来霧さん» やったー！ありがとうございます これからもお付き合いください！ (2019年8月19日 2時) (レス) id: a3e8a2be57 (このIDを非表示/違反報告)
来霧(プロフ) - 続きが！きになりすぎます！！応援していますー！頑張ってください！ (2019年8月17日 0時) (レス) id: cc1c1fbc8a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こめ | 作成日時：2019年6月22日 21時
