また会えたのに ページ14
後にも先にも闇が広がる人生の中で、可能性の光を見た事がある。大切にすると誓って、また会いたいと焦がれた。どんなに思い留めようと、何故だか急速に薄れて芥川の元から消え去ろうとした記憶だ。
芥川の上から早々に退いた子供は、居丈高に腕を組んでみせた。
「世話になったな」
「お礼はきちんと言う」
「はい」
鏡花の云う事はよく聞くらしい。軽く頭を叩かれ、子供は「ありがとうございました」と鏡花と共に頭を下げた。子供は芥川の事を知らない。偶然に顔の似ている他人だと思っている。
異能により一時的にこの世に顕現していた我が子が、今度は確かな存在と体を手に入れて芥川の目の前に居る。芥川はその事実を当たり前のように理解できた。
だが、壊れてしまいそうな小さな指は、己を呼んでいた幼い声は、もうそこにはない。子供はもう幼子ではないからだ。
「成長したな……」
「……何が……？」
子供は首を傾げた。ずっと帽巾に覆われていた為か、少し乱れている白髪。それを梳いて整えてやりたい衝動と葛藤する。この感情を上手く表に出すには芥川はまだ若かった。
「さよなら」と子供と共に踵を返そうとする鏡花を芥川は咄嗟に呼び止めた。二人の調子から察するに、子供は鏡花と過ごしている事が多いらしい。
「……何？」
胡乱げに芥川を見つめる鏡花。ともすれば心を挫かれそうな少女の冷たい視線であるが、芥川はただどうすれば子供と長く居られるかを考えていた。
「そこの猫は僕にやたらと懐いている。貴様等は其奴を捕らえておく檻も持っておらぬだろう。また逃げ出す可能性を考えれば、僕が抱いて歩くのが妥当ではないか？」
「なぁう」
「そら、筍ご飯も『その通りだ』と云っている」
「だからこの子の名は栗ご飯……じゃなくてマロン」
不承不承に納得した鏡花から猫を受け取り、芥川は�猊霑�探偵社の前まで�瓩箸い�条件で子供と並んで歩く事が叶った。
□□□
やっと『マロン』という名を覚えた子供である。その道程の長さに鏡花は密かに辟易とした。
「芥川さんはすごいな。何でそんなにマロンを手懐けられるんだ」
「僕にも判らぬ。……この毛先を見て仲間だと思われているやもしれんな」
芥川は己の横髪を摘んでみせた。猫の足と同じ色合いだ。
「白いのは私も同じなのに」
子供の羨ましそうな視線を受け、芥川は唇の端を緩めて笑ったように見えた。
専ら鏡花の疑問は、やけに彼等が互いに気を許している点である。
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ロト - こめ(元団子)さん» お久しぶりです！最近わりと多忙でした…少し時間が空いてきたので見てみようと思えば結構更新されてて嬉しかったです！癒されました〜！ (2019年8月25日 23時) (
レス) id: 84710b8cd8 (このIDを非表示/違反報告)
こめ(元団子)(プロフ) - ロトさん» ロトさん！ お久しぶりですね！ そうです娘主は奔放な子供なので自由に遊び回っては国木田さんに叱られ 最終的には追いかけ回されますw (2019年8月25日 22時) (レス) id: a3e8a2be57 (このIDを非表示/違反報告)
ロト - 近所迷惑(社員寮)……つまり、国木田さんの胃痛が増すんですね分かります。 (2019年8月25日 1時) (レス) id: 84710b8cd8 (このIDを非表示/違反報告)
こめ(元団子)(プロフ) - 来霧さん» やったー！ありがとうございます これからもお付き合いください！ (2019年8月19日 2時) (レス) id: a3e8a2be57 (このIDを非表示/違反報告)
来霧(プロフ) - 続きが！きになりすぎます！！応援していますー！頑張ってください！ (2019年8月17日 0時) (レス) id: cc1c1fbc8a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こめ | 作成日時：2019年6月22日 21時
