省みて ページ12
「なあ芥川」
「何だ」
「昨夜、暗殺の任務があったんだけどさ、初めてなのに一人で遂行できたんだ。すごくない?」
え? 十四歳の鏡花は三十五人? うるせえ異能者と一般人を一緒にするな。
褒めて、と鬱陶しく絡む俺を見やり、芥川は俺の髪をワシャワシャと掻き混ぜた。犬になった気分。
「偉いな」
「へへーん。マフィアに拾われてから六……七?年間、姐さんの側仕えだけやってたわけじゃないんだからな!」
「遣り方は?」
「銃や刃物は血が飛び散って目立つから駄目だし、体内で溶ける毒針でサクッとやった。心臓をピンポイントで狙わなきゃだから難しかったけどなー」
「そうか」
返事も御座なりに、芥川はふんふんと俺の首に鼻を寄せて匂いを嗅いでいる。臭うのだろうかと少し傷ついたが、顔を上げた芥川は「違う石鹸の香りがする」と言っただけだった。
「昨日ホテルで風呂済ませたからかな」
すぐ側に死体がある状況で体を洗った。いや帰ってからにしろよとか咎められるかもしれないが、何か体液がベタベタ体に残って気持ち悪かったのだ。
□□□
頬を張られた。柔らかそうな唇は怒りに歪んでいる。さすがに俺もちょっと怒って、じんじんと痛む箇所を押さえ、彼女に言い募った。
「だから、俺は君と同じような手段で人を殺して、結果、次の日は腰が痛いということがわかった。これは辛いね。色の任務後は休みを貰えるよう打診してみるよ」
「そういう、そう云う話じゃないの。好きでもない人に股を開く事を余儀なくされて、感じたものはその程度?」
「そうだけど……」
「そんなので分かったような口聞かないで!」
「俺は君じゃないんだから全てを理解するなんて無理だ!」
再び手が振り上げられた。これに抵抗したら、さらに彼女の怒りはヒートアップすることが目に見えているので、ぎゅっと歯を食いしばり覚悟を決める。さあひと思いにひっぱたけ。
「姦しい。喧騒ならば他所でやれ!」
「あ」
わあ黒蜥蜴の皆さんだ。これからお仕事だろうか。俺達のそばを通りがかった彼等の中に居合わせた芥川に怒られてしまった。まあ、これから命を賭した任務だって時に、しょうもない喧嘩を見せられたら腹立つだろうな。彼等の任務は総じて危険度の高いものが多いのだから。
「ごめんなさーい」
怯える彼女の肩を抱いて早々に立ち去る。普段感情を表に出さない芥川が怒ると物凄く怖いので、彼女のように足が竦んでしまうのも仕方ない。
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こめ(元団子)(プロフ) - ドロシーさん» 嬉しいです! ありがとうございます! (2019年10月16日 0時) (レス) id: a3e8a2be57 (このIDを非表示/違反報告)
ドロシー(プロフ) - 好きです。(真顔)普通に自分の好きな小説のタイプにドストライクすぎて怖いくらい好きです。もうもっとヤってもらって大丈夫っす(鼻血)これからも応援してます!更新頑張ってください! (2019年8月9日 0時) (レス) id: 1a3258aeeb (このIDを非表示/違反報告)
こめ(元団子)(プロフ) - 鯖野郎さん» ありがとうございます どんどんヤります (2019年5月25日 23時) (レス) id: a3e8a2be57 (このIDを非表示/違反報告)
こめ(元団子)(プロフ) - ろもざんさん» 文面にセンスがありすぎて笑ってしまいました。更新はややゆっくりですがこの先もよろしくお願いします! (2019年5月25日 23時) (レス) id: a3e8a2be57 (このIDを非表示/違反報告)
鯖野郎 - いいぞ もっとヤれ(真顔) (2019年5月8日 21時) (レス) id: df533e69bf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こめ | 作成日時:2019年1月14日 14時