撫でて ページ2
ぬる、と唇の隙間を割って入ってきた温かいものが舌であることに気づくまで時間がかかった。驚いて目を見開く俺をよそに芥川は舌を絡ませ、ときどき吸う。人のこと言えないけどこういうのって普通目を瞑るんじゃないのか。芥川普通に目開いてるけど。
「……ちょ、まっ…………待って!」
「んむ、」
芥川を押しのけ、また顔を近づけられそうになったので芥川の口を掌で塞いで阻む。自分の口元を拭えば唾液で濡れていた。純粋な疑問で芥川に問いかける。
「急になに?」
「?」と何のことを聞かれているのか判らない表情をされた。ええいこの天然め、と思いながら「何でちゅーしたの?」と言い直す。口を覆う手を離してやれば芥川は自分でもその理由を探るようにゆっくりと答えた。
「お前の口腔の感触が気になり、」
「……うん?」
「あのような行為に及んだ」
「そっかぁ……」
全然わからない。芥川の顔は真剣そのもので、冗談を言っているという可能性はなさそうだ。「温度質感共に僕と変わらぬ」と丁寧に感想まで述べてくれた。そりゃ同じ人類だものだいたい一緒だよ。思わず遠い目をすると、芥川の顔は少し曇った。
「……同性にされるのは嫌か」
あ、一般に男女の関係にある人達がする行為だって認識はあったんだ。
それはさておき、例え俺達がそういう関係に無いにしても芥川を否定しなくはない。多分芥川は人との適切な距離感がよく分かってないだけだ。かといって俺が正しいそれを知っているわけじゃないけど。
嫌とか気持ち悪いとかは思わないけどきちんと伺いを立てる、又は俺にどうして欲しいのか伝えてから行動に移してほしい、という旨を話すと、芥川は心得たというように頷いた。
「撫でて欲しい」
「よしきた」
年下の俺に頼むのもどうなんだと思わないこともないけど、この程度の触れ合いなら多々あることなので気にしない。それに彼の半生を聞く限り芥川は存分に甘やかされて然るべき存在だ。わしゃわしゃと頭を撫でる。
「夕餉は食べた?」
「未だ」
「何か作るね」
「ああ」
「今日は泊まる?」
「ああ……」
ぼんやりとした口調で受け答えしながら、俺の胸に額を擦り付ける芥川。その後風呂まで一緒に入ったけど、普通の友人同士はここまでするのだろうか。お互い友達が少ないので正常な距離感がわからない。
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こめ(元団子)(プロフ) - ドロシーさん» 嬉しいです! ありがとうございます! (2019年10月16日 0時) (レス) id: a3e8a2be57 (このIDを非表示/違反報告)
ドロシー(プロフ) - 好きです。(真顔)普通に自分の好きな小説のタイプにドストライクすぎて怖いくらい好きです。もうもっとヤってもらって大丈夫っす(鼻血)これからも応援してます!更新頑張ってください! (2019年8月9日 0時) (レス) id: 1a3258aeeb (このIDを非表示/違反報告)
こめ(元団子)(プロフ) - 鯖野郎さん» ありがとうございます どんどんヤります (2019年5月25日 23時) (レス) id: a3e8a2be57 (このIDを非表示/違反報告)
こめ(元団子)(プロフ) - ろもざんさん» 文面にセンスがありすぎて笑ってしまいました。更新はややゆっくりですがこの先もよろしくお願いします! (2019年5月25日 23時) (レス) id: a3e8a2be57 (このIDを非表示/違反報告)
鯖野郎 - いいぞ もっとヤれ(真顔) (2019年5月8日 21時) (レス) id: df533e69bf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こめ | 作成日時:2019年1月14日 14時