2話 ページ2
Aは尾形の身体を川から遠ざけるため少しばかり移動させると、無いより暖かいと思って尾形の身体へ自らの外套と襟巻きをかけてやった。
返事は期待しないが声を掛けつつ周囲に落ちている小枝などを集め、手早に暖をとる準備をしていく──。
火が大きくなる間、Aは尾形の怪我の具合をみてみた。
やはり腕は折れているので変に動かないよう、副木を固定させ応急処置を施してやる。今してやれる事はやった……後は報告しに兵舎まで帰らねばならない。
(運ぶとなると難しい……どうしようか)
ぱちぱちと鳴る焚き火をぼーっと見つめる。
そうしてどのくらい経っただろうか、何か滑走するような音が近づいてきた。
それは樺太式のスキー板で移動していた別動隊であった。彼等は火の煙が目に付きこの場所が分かったのだと言う。
その後、機動力のあるこの別動隊の連携で思っていたよりは早く鶴見中尉らが見えた。報告の為に鶴見中尉の元へ駆け付け、声を掛ける。
「鶴見中尉殿」
「……状況の説明を」
鶴見中尉は横たわっている尾形上等兵へ目を向けた。
「はい。岸まで這い上がっているところを発見したものの怪我が酷く体温も低い状態でした。発見が遅ければ死んでいたかと」
「何者かに山で襲われたのか？どうして尾形上等兵は単独行動していたのだ？」
「わかりません。銃声は聞いたのですが既に意識は無かったもので詳細は聞き出せておりません」
「……ご苦労、よく見つけてくれた。キミはよく休みなさい」
鶴見中尉に礼を述べ、衛生兵らが囲んでいる尾形の場所へ戻ってみるとしっかりとした処置を受けた尾形の姿があった。
側にいた兵士から外套と襟巻きを受け取る。それは尾形へ掛けていたものだが、焚き火に長い時間あたっていたのもあって気にならない程まで乾いていた。
もう後は兵舎へ帰るだけなので躊躇無く身に纏う。何より報告の為に火から離れていたので寒かったのだ。
嗅ぎ慣れないにおいが一瞬香り、それが気に入らなかったがこの温もりには逆らえなかった──。
そして、すっかり日が暮れた帰路。殿を進む。
Aはどこからか取り出したペンダントを強く握りしめ、その冷たさを感じながら星空を見上げた。
(まだまだ先になるなぁ……)
そこには静かな焔があった。
──その晩、夢をみた。たまに逢える夢である。
それは懐かしい匂い、そして『ちりり』口の端に熱を感じると頬へ雫が降ってくる夢。
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ra(プロフ) - プスメラウィッチさん» しがない字書きにコメントありがとうございます🙇とても元気をもらえました。実はこのサイトで文章トレスされてしまっていたようで、もうここには投稿しない方針で考えています。pixi⚫︎の方などに投稿するか検討しているのでその際はお知らせいたします (1月31日 22時) (
レス) id: e3ec8bd41f (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ(プロフ) - 続きの更新頑張って下さいね😆応援しています。 (1月31日 15時) (レス) @page26 id: b10205217f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ra | 作成日時：2021年5月13日 1時
