惑星アロー奇襲戦2 ページ49
「張長官!レーダーに感あり! 正規空母……護衛空母?らしきもの1隻、軽巡洋艦16隻、哨戒艇多数、輸送船7隻!」
「空母か! どんな大きさだ!」
「巨大です」
「そうか! デカイ艦は大体重要だったりする。だから逃すな! 全滅させるぞ」
艦船攻撃を命じられていた張艦隊90隻(10隻は修理または撃沈されたため補充中)は下げ舵を一杯にしてレールガンを斉射した。波しぶきが天を衝くかの如く立ち、艦上は洗濯機に洗われた洗濯物のようにずぶ濡れになった。異変に気付いた艦艇は40ミリ機関砲や70ミリレールガンを上空に発射した。だが、その多くは掠めることすら出来ずにいる。ただ虚しく沈んで行くことしかできないのか。乗員たちは大きな恐怖心に駆られた。
「左舷に着弾!浸水!傾斜止まりません……」
「右舷に注水せよ」
「無理です。もう限界まで注水しました!」
「艦長、ならば積み荷を下ろせ」
焦る艦長に脂汗を垂れ流しながら統合参謀長は言った。だが、やれることはやった、これ以上何を下せと言うのだ。艦長らはそう思っただろう。
「下ろせるものは下ろしました」
「違う。兵員だよ、兵員。半分くらい落とせばいいだろう、そこから。結構な人数がいるからな」
少なくとも自分の発言に全く疑問を抱いたり後ろめたさを抱いたように見えない様子の統合参謀長に艦長は血相を変えて言った。
「できません、そんなことは。彼らは一人の人間、助かるかもしれないにもかかわらず、態々殺すこともないでしょう!」
「甘いよ君。あのね、一万人やそこらの兵卒がいなくても軍は回るんだよ。でも、私が死ぬと回らない。私が生き残ればいいんだよ」
「正気じゃない……兵士をその程度のものにしか考えられない人間がトップにいる以上、軍隊は回らない。持ちつ持たれつという言葉を知らないのですか!?」
「私にそんなことを言うか、いい度胸だ」
その時、1発の砲弾が船橋に命中した。艦長や統合参謀長は吹き飛び、統合参謀長は滑り落ち、墓場となりつつある海に振り落とされた。
「助けてくれ! 私はカナヅチなんだ!」
彼の必死の叫声も船の吐く咆哮に掻き消され、振り向くものすらいない。沈んだ船や何やらでただでさえ注意がそっちに向いている、誰も気づくはずはない。勿論気づいても助けるとは言い切れないだろう。気づいていないフリをするかも知れない。自分達を使い捨ての駒のように言う人間を助けるお人好しはいない。
孤独な彼に黒い帆を張った魚影が三つ向かっていった。
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デ・ロイテル(プロフ) - 特命さん» ご清覧ありがとうございます。そうでしたか、失礼しました。見つけ次第すぐに対処致します。本当ですか!?ありがとうございます。推敲には力を入れているのでそう言っていただけると嬉しいです。続編の方もよろしくお願いします。 (2018年10月5日 21時) (レス) id: 707fc28c68 (このIDを非表示/違反報告)
特命 - 楽しく読ませて頂いています。どこかに「機器」が「危機」になっている箇所と、助詞の「は」が重複して「はは」になっている箇所があったようです。勘違いでしたらすみません。これほどの長さの文章で2カ所だけってすごいです。続き楽しみにしています。 (2018年10月5日 21時) (レス) id: 3f4c6d750f (このIDを非表示/違反報告)
デ・ロイテル(プロフ) - 次で50話ですね。キリ悪い…… (2018年10月4日 0時) (レス) id: 707fc28c68 (このIDを非表示/違反報告)
Olivie(オリヴィエ)(プロフ) - デ・ロイテルさん» これからも頑張って!!おうおう、良かった〜……(チャット化しそうなので返信不要) (2018年9月30日 0時) (レス) id: 26b767d003 (このIDを非表示/違反報告)
デ・ロイテル(プロフ) - Olivie(オリヴィエ)さん» いえいえとんでもない!これからも精進しなくては!嫌うなんてないで。三笠と一緒に居れるねんで?ぜーんぜん怒ってへんよ。 (2018年9月30日 0時) (レス) id: 707fc28c68 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:デ・ロイテル | 作成日時:2018年8月12日 0時