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鍾愛 27 ページ28

ポートマフィア拠点ビルの最上階。つまりはポートマフィアと云う組織で一番偉いもの…森鴎外が居るであろう一室に来客を示すノックの音が響く。

失礼します、と落ち着いた声の主は組織の上層部内でも此処に出入りするのが比較的少ない人物だ。

珍しい来客にも関わらず森が表情一つ崩さないのは彼が呼んだからである。至極当然だ。

「…彼女の容態は如何かな?」

「意識不明の重体です。敵からの攻撃により全身に十八箇所程度の切り傷、右膝・左肩関節の脱臼、右足首靭帯損傷。そして三十九度の高熱。意識回復の目処は立っていないと思われます」


語り主である西野月夜も表情を変えずに同僚が痛々しい傷を負ってるにも関わらず淡々と述べた。

彼女と呼んだ女には組織内でも屈指の専属医をつけているがその男から直属に報告をもらわずに西野を呼び出したのには理由があった。


「異能の制御は矢張り難しいかね」

「私が向かった時には半狂乱でした。後数分遅ければ死んでいたかと」

その言葉に森は少々目を細める。横の壁に掛けてある一枚の絵画にメスを投げ飛ばしながら抑揚なく他所事のように話し始める。

「彼女の異能は素晴らしいものだがね、欠点が多すぎるんだよ。其れを補填するのが君の役目ということだ」

「そうですね」

その平坦な相槌はまるで人形のようだった。しかし西野に力強い光が宿っているのを組織の長、森鴎外は見逃さなかった。

「君の異能も大変優秀だよ」

「…云った筈です。私の力は他の事には使いません」

刺さったメスは絵画を切り裂いた。西野は失礼しました、と森の返事を待たずに踵を返す。

「待ちなさい」

その声に一度歩みを止めた西野。森が彼女の後ろ姿に投げかけた言葉は彼にとって単純な疑問だった。

「君は如何して…その力を他に使おうとしないのかね」

女は振り向きもせずに自嘲気味にふっと笑みを漏らした。彼女の表情に変化の色を見せた事は、森の前では初めてであった。


「愚問ですね。その質問に答える時は私が役目を全うした時のみですよ」


そう残して再び歩き出した西野。その姿を見た森はそっと口角を上げた。


_____


己の感情は 己の感情である。 己の思想も 己の思想である。 天下に一人も それを理解してくれなくたって、 己はそれに安じなくてはならない。
 
_____





 

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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 文スト , 太宰治   
作品ジャンル:恋愛
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あい - ??? (1月29日 23時) (レス) id: 59cf03caf8 (このIDを非表示/違反報告)
あい - 更新中でしょうか?ワクワクです (1月29日 20時) (レス) @page43 id: 59cf03caf8 (このIDを非表示/違反報告)
時雨 - これ太宰さんどうなっちゃうんでしょうか……あと文才ご凄くありますね! (1月22日 11時) (レス) @page31 id: 68fda9e290 (このIDを非表示/違反報告)
- こういう系あまり読み続けられないんですがこれは一気に読めちゃいました…!文章能力すごい高いですね…尊敬…更新待ってます!頑張ってください! (8月26日 15時) (レス) id: efb8355445 (このIDを非表示/違反報告)
ライム - こういう物語って大体中也ポジの人は振られちゃうので、この展開メッチャ好きです!私が中也推しなのもあるかもですけど、wとにかく更新楽しみにしてます! (2023年3月25日 3時) (レス) @page42 id: e7904a37c4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:桜雪 | 作成日時:2020年1月25日 21時

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