愛吐 7 ページ7
「先ずね、彼女はこう抱きしめた時に柔らかくて…」
「ほう、雌なのか」
「そして、その時に清潔ないい香りがして…」
「ちゃんと世話してやってるのだな」
「思考が読み取りやすくてとても純粋で」
「動物の気持ちがわかるなんてすごいなお前」
「なんだかんだ私に忠実に従ってたのだよ。躾けたことは絶対に覚えている」
「例えば?」
「いやあ、此処からは国木田くんには少し刺激が強いよ」
「何の話をしているんだ?お前は」
そこまで真剣に相槌を打っていた国木田だったが突然不審に思い聞き返す。太宰は国木田の勘違いを知ってか知らぬかこう云う。
「だって、彼女人間だもの」
「はァ!?」
国木田の鉄拳がこの後間も無く飛んで来るのは目に見えている。太宰はそれから逃れるためすぐ近くにあった川に目を留めた。
「お〜っと、あれはとても良い川だね」
「…は?って、オイ!待て太宰!」
__________
コツ、コツ、と地下牢に普段くる監視人ではない足音が響く。反射的に耳をすませるがその警戒心が外に出ることはなく、ただ背を向けて静かに座っていた。
「…」
かちゃりと鍵が開く音が聞こえた。その瞬間光の速度で女の首元まで向かおうとした。しかしその女は居るはずの場所にいなかった。
『初めまして』
少女は声がしたはずの後ろを振り向いた。其処にも女はいなかった。警戒を強めて辺りを見渡す左から正面。後ろから右へ。右から正面へ。左から後ろ…
『中原幹部の補佐をしております。櫻田Aと申します』
今まで居なかったはずの空間に急に現れた女。少女は少し動揺の色を見せた。
『異能力の乱用は上司から禁止されて居るんだけれども…』
「貴方の能力は"姿ありけり"…聞いたことがある」
『おー、凄いね…ならば話が早い!ところで鏡花ちゃん』
鏡花は虚ろな目で目の前にいる女を見た。
『好きなものはありますか?』
女の左の二の腕に傷が入った。床にはぽたぽたと赤い血溜まりができた。
『…私が、ポートマフィアが憎い?』
自嘲した女は鏡花に近寄り、背丈を合わせて目を合わせた。鏡花は驚いた。その瞳が余りにも人を殺す人間の目ではないからだ。
鏡花はナイフを持った手をほんの少しだけ緩めた。
『また来るからね』
そう云い残し女は去って行った。
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桜雪(プロフ) - りかまるさん» コメントありがとうございます。応援してくださる方がいて本当に感謝してもしきれません。拙い物語ですがこれからもよろしくお願いします、! (2019年4月13日 12時) (レス) id: c10e018f98 (このIDを非表示/違反報告)
桜雪(プロフ) - のら猫さん» 10分、、それはすごい、、!コメントありがとうございます!自分のペースで頑張ります! (2019年4月13日 12時) (レス) id: c10e018f98 (このIDを非表示/違反報告)
桜雪(プロフ) - びあんさん» コメントありがとうございます。やっぱり小説を書くのってとても労力のいることだと思います。びあん様も同じ作者の身として無理のない程度に頑張りましょう! (2019年4月13日 11時) (レス) id: c10e018f98 (このIDを非表示/違反報告)
桜雪(プロフ) - sonataさん» ありがとうございます。sonata様の作品とても素敵でした、、!大好きだなんて言葉を頂けてとても嬉しいです。お互い頑張りましょう! (2019年4月13日 11時) (レス) id: c10e018f98 (このIDを非表示/違反報告)
りかまる(プロフ) - ゆっくりでも大丈夫です。無理なく、執筆して頂けたらと思います。応援しています! (2019年3月24日 22時) (レス) id: dbac4f4de5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桜雪 | 作成日時:2018年12月29日 21時