愛吐 27 ページ33
「…してAよ。お主は少し異能に頼りすぎじゃ」
甘味に楊枝を入れると紅葉姐さんが唐突に話題を入れてきた為その手を止める。
『存じ上げております』
「異能は強いが便利品だと使い過ぎると何れ身を滅ぼす」
そう云って紅葉姐さんは熱いから気をつけるんじゃぞ、とお茶を渡してきた。
『…尾崎幹部が私を準幹部に推薦したのは何故ですか』
その問いかけに動じることも無い彼女は煎茶を啜った。
『身内贔屓で位を決めるようなお方が幹部についているのなら其れは問題です。紅葉姐さんが私を推薦したのはもっと他に理由があるのでしょう?』
本当に、私は強靭な異能を持つわけでも体術や頭脳に秀でている訳では無い。
他の準幹部に比べても戦果も劣っているし利益もまちまちだ。
「…その質問には答えられぬな」
何故、と云いかけた所で紅葉姐さんは続けた。
「お主が其れを聞いたところでどうする」
私はその言葉に顔を上げた。
『……自分がこの職に、合わないと感じるんです』
「Aよ、殺すだけがマフィアの仕事ではない。お主の様な異能や特性を持ち合わせている者もまた少数であるが必要なのじゃ」
『私は、続けるべきなのですか。殺すだけがマフィアではないのなら、人を殺さない事だって』
そこで気づいてはっと息を呑む。この手の話題はタブーだった、と気づき冷や汗をかく。
まともに紅葉姐さんの顔を見れずに目線を逸らす。
「…光の世界に目が眩んだのかえ?」
私はふるふると首を横に振る。
「太宰の奴に誑かされたのじゃろう?…可哀想に」
すっと淡白桃色の着物に包まれる。そこから伝わるのは確かに人肌の温もりだが、身も心も凍ったように動かない。
「Aよ。お主は鏡花の様に居なくなってくれるなよ…」
紅葉姐さん、泣いている。
彼女は、私が"態と"光の世界に送り出したことを知っているのだろうか。
若し知っていて、私をクビにしないのは……何故?
「愛いのう……」
優しい手つきで頭を撫でられる。
「Aが光の世界へ出た途端、外は地獄じゃ。身寄りのない其方を引き取ってくれるのは他に誰がいよう」
「ポートマフィアに居る限り、お主には私や中也がおる」
そうだ。私は外に出たところで誰も味方はいない。それならば、私を必要として愛してくれている人の所にいるべきなのだろう。
『紅葉姐さん。……私も、ポートマフィアが大好きです』
だから、
『組織を守る為なら、何だってします』
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桜雪(プロフ) - りかまるさん» コメントありがとうございます。応援してくださる方がいて本当に感謝してもしきれません。拙い物語ですがこれからもよろしくお願いします、! (2019年4月13日 12時) (レス) id: c10e018f98 (このIDを非表示/違反報告)
桜雪(プロフ) - のら猫さん» 10分、、それはすごい、、!コメントありがとうございます!自分のペースで頑張ります! (2019年4月13日 12時) (レス) id: c10e018f98 (このIDを非表示/違反報告)
桜雪(プロフ) - びあんさん» コメントありがとうございます。やっぱり小説を書くのってとても労力のいることだと思います。びあん様も同じ作者の身として無理のない程度に頑張りましょう! (2019年4月13日 11時) (レス) id: c10e018f98 (このIDを非表示/違反報告)
桜雪(プロフ) - sonataさん» ありがとうございます。sonata様の作品とても素敵でした、、!大好きだなんて言葉を頂けてとても嬉しいです。お互い頑張りましょう! (2019年4月13日 11時) (レス) id: c10e018f98 (このIDを非表示/違反報告)
りかまる(プロフ) - ゆっくりでも大丈夫です。無理なく、執筆して頂けたらと思います。応援しています! (2019年3月24日 22時) (レス) id: dbac4f4de5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桜雪 | 作成日時:2018年12月29日 21時