けじめ ３８ ページ39
チカチカと点滅する看板を目端に湿っぽい階段を降りた。この景色も今では思い出の詰まったものとなってしまいつつある。
この店が後何年残っているかもわからない。私は目を伏せて扉をくぐった。彼等はもういる筈は無いが其処にはいる気がした。
しかし其処に居たのはよく見覚えのあるスーツを着た彼女だった。
私は予想外の刺客にほんの少しだけ驚いた。
「…私を殺しに来たのかい？」
彼女は何も云わなかった。顔が髪の毛で隠れており横からではよく表情が判別出来なかった。私は何時ものをマスターに頼む。
「びしょ濡れじゃあないか。風邪ひくよ」
これは普通に本心だった。物の管理がしっかりと出来る彼女の着ているスーツは所々破れて出血して居た。
飲み物が届き、私はそれを一口含んだ。何時もと全く変わらない味だった。
其処でやっと彼女は言葉を紡ぎ出した。
『マフィアは莫大な利益を得ました。この事を全て予測していた首領は勿論貴方の失踪も計画に織り込み済みでした』
私はグラスに注がれた酒をまた一口飲む。カランと氷の揺れる音が響いた。
『裏切り者は始末。これは私の職場の掟です。私は貴方を殺さなくてはなりません』
「私は抵抗しないよ。好きにするがいい。君になら殺されても_____」
『どうして！…私にそのような事ができましょうか！』
彼女がやっと顔をあげこちらを向いた。サファイアのような青い瞳は零れ落ちそうなほど綺麗だった。
私が彼女の顔に触れようと手を伸ばすと横に躱した。彼女が行動で直接拒否をしたのは其れが初めてだった。
私は彼女の瞳から目を逸らさずに云った。
「手中に収め用としたものはね、同時に手放すことも約束されるんだ。それでも私は君が欲しかった。幾多の人間を見て来た中で私が一番興味をそそられたのが君だった」
『…それ以上云わないでください』
「いいや、辞めない。私はAを」
『辞めてってば！』
はたまた、彼女が口調を乱しているのもこれが初めてだった。それだけ彼女は動揺していた。客も消えマスターも消えた静かなバーの中で互いの頭には互いのことしか無かった。どれだけ彼女が拒もうと私は迷わずその言葉を口にした。
「愛している」
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nemucan427(プロフ) - 桜雪さんはじめまして！この作品面白くて大好きです お手数ですがパスワードを教えていただけないでしょうか？ (9月1日 21時) (
レス) id: 8afaa5b029 (このIDを非表示/違反報告)
なずな(プロフ) - 桜雪さんはじめまして！とても面白かったですよろしければパスワードを教えて頂きたいです (2023年3月28日 11時) (レス) id: 77590b4a4c (このIDを非表示/違反報告)
アルルの「 」 - 太宰さんの歪んだ愛し方が本当に大好きです・・・！！ (2023年3月13日 1時) (レス) @page41 id: a35ce8017e (このIDを非表示/違反報告)
嶺亜(プロフ) - 桜雪さんはじめまして!!作品とても面白かったです。よろしければパスワード教えていただきたいです。よろしくお願いします。 (2023年2月5日 18時) (レス) @page10 id: be050932d4 (このIDを非表示/違反報告)
霞奈斗(プロフ) - この作品に出会ったばかりなのですが、とても面白く続きを読みたいです！パスワードを教えて頂くことは可能でしょうか...？( ˊᵕˋ ;) (2023年2月5日 8時) (レス) id: c32082b1c8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：桜雪
| 作成日時：2018年3月29日 13時
