だから僕は、雨ごいを。【Ryusei.F】 (ページ5)

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ぼちぼちとしか来なかったお客さんも、だんだん人数が減っていって

1度も混むことが無いまま、今日は平和にシフトの終了時間を迎えた。

｢ねえ湧くん、｣

湧｢あ？なに｣

あがりの時間が一緒だったらしい湧くんと、ロッカールームでゆっくり着替えながら

ふと、数時間前の出来事を思い出して聞いてみることにした。

｢湧くんって、誰かのこと見たまま動けなくなったこととかあります？｣

湧｢は？何言ってんのおまえ｣

そんなん相手メドゥーサだろうが！！って笑ってる湧くんに

え、湧くんってメドゥーサ知ってたんだ

なんて言ったら、しばかれそうだからやめておこう。

湧｢なに、いつメドゥーサに会ったの｣

｢いや別に会ってないっすよ、きいただけ！！(笑)｣

湧｢お前そのうち石にでもなるんじゃねーの？！

んまあ分かんねえけどー…漫画とかだと恋に落ちた瞬間とかあ？？
あとは相手がとんでもねー格好してたとか？？そんなもんじゃね？｣

恋に、落ちた瞬間…？

別にあの子は変な格好してなかったし…

じゃあ、もしかして…それ、？

考えれば考えるほど、そんな気がしてならなくなってきた

湧｢じゃあ石になんねーように気をつけて帰れよ深田、いざなっても俺がその体かち割ってやっから！｣

｢それじゃ俺しんじゃいますよ！！｣

湧｢ははは！(笑)おつかれ！｣

｢お疲れさまっす(笑)｣

湧くんって本当に楽しい人。

方向が違うからと、いつも出口で別れる帰り道は一人ぼっちで。

別に寂しくはないけど、なんだか今日は
誰かと話していたくて

マナーモードにしていたままの携帯を、乾いたばかりの
ズボンの後ろポケットから引っこ抜いた。

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