【◇】御幸一也の姉ちゃん (ページ22)

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バレンタイン3 ページ22

*一也くん目線*

週に2日の平日練習を終え、家に帰るとねえちゃんが
今年もバレンタインのチョコを作っていた。

甘いものが苦手な父ちゃんと俺のために
食べやすい甘くないやつをいつも作ってくれて
これがかなりうまい。

そんな中、ねえちゃんに彼氏ができたことを初めて知った。
しかも、どうやら半年近く前からだそうだ。

俺はそれを聞いた途端、なんだかモヤモヤして
バットの素振りをするといって、家を出た。

バットの素振りをしながらそのモヤモヤを
消そうとしたけど、その日は気分が晴れないままだった。

翌日も、なんだか気持ちは沈んだまま、あんまり
ねえちゃんと話すことなく学校へ行った。

家を出る瞬間にねえちゃんの顔をちらっと見たけど
とても悲しそうな顔をしていた。

学校が終わり、今日は野球の練習がないので真っ直ぐ家に帰る。
今日はバレンタインだし、ねえちゃんは帰りが遅いだろう。

帰りにクラスの女子からいくつかチョコをもらったけど
特に好きな子がいるわけではない俺にとっては
お返しのことを考えると、憂鬱になるだけだった。

夕方、家に帰るとそこにはねえちゃんが夕飯を作る姿が。

『一也おかえり～。今日は一也の好物ばっかりだよ～！』

一也「なんでいるの？」

『え！？姉ちゃん帰ってきちゃダメなの！！？』

一也「いや、そういうわけじゃないけど...。
その...今日、バレンタインじゃん。彼氏はいいの？」

『ああ、さくっと学校で渡したよ。
相手はまだ受験終わってないからね、邪魔しちゃ悪いし。』

一也「ふーん...。」

『それより！もうすぐ夕飯作り終わるからさ
久しぶりに姉ちゃんとキャッチボールしよう！！』

一也「え？今から？？この寒い中するの？」

『最近運動してないし、体なまってるんだよね～。
だから一也付き合ってよ。』

一也「別にいいけど。」

姉ちゃんが何を考えてるのかよくわからなかったけど
久々にキャッチボールをしようと言ってくれたのは
素直に嬉しかった。

何もせず待つわけにはいかないので、ご飯作るのを手伝う。
そんな俺にねえちゃんは優しい顔でありがとうと言ってくる。

別にお礼を言われることなんてしていないのに。
むしろお礼を言わなければいけないのは、俺のほうだ。
いつも自分のことより俺を優先してくれる。

そんな優しいねえちゃんには、感謝でいっぱいだ。
そして誰よりも幸せになってほしいと思う。
けど、彼氏ができたことを聞いた瞬間、なんだか寂しくなった。